「マッチポイント」
本日の映画
movie-77 「マッチポイント」 Match Point 2005年米
DIR:ウディ・アレン
CAST:ジョナサン・リース・マイヤーズ、スカーレット・ヨハンソン、エミリー・モーティマー、マシュー・グード、ブライアン・コックス
STORY:元プロテニスプレイヤーのアイルランド青年クリスはロンドンの会員制テニスクラブのコーチとして働きはじめるが、やがて実業家の息子トムと親しくなり、その妹クロエと交際を始める。次第に上流社会へと食い込む彼だったが、トムの婚約者のアメリカ人ノラと出会い強くひかれてしまう。
☆☆☆ワタクシはウディ・アレンの軟弱なファンである。
つまり、好きなアレン映画で好きな作品は、「カイロの紫のバラ」、「ラジオ・デイズ」、「世界中がアイ・ラヴ・ユー」、「マンハッタン殺人ミステリー」などなど。アレンのあくの強さがあまり出ていない作品ばかりだ。
で、この作品だが、あまりアレン的でない、というのが率直な感想。もし、監督が誰かを知らずに見たらわからなかったかもしれない。ニューヨークが舞台でない、ということだけでなく、泥臭いギャグやしつこさがないのである。がしかし、アレン流の皮肉っぽさは健在で、上流階級の描き方もシニカルだけれど、なんといってもラスト。ボールがネットのどちらに入るかで、勝ち負けが決まる・・・という話が冒頭で出てくるので当然そういうラストなんだろうなあと思ったところが、予想をくつがえすラストだ。正直言ってこの終わり方?と見た直後は思ったけれど、よくよく考えると皮肉なラスト。上流社会に憧れうまく潜り込んだ貧しい出のアイルランド青年が、結局は上流社会のわざとらしく、そして退屈な人々にがんじがらめにされてしまうのである。彼らの方がしたたか、と思わせるラストで、なかなか新鮮だった。アレン版「太陽がいっぱい」という話もあるが、ここが違いますね。
主人公の青年は、野心がギラギラには見えないのだが、オペラの知識を身につけ(冒頭からラストまで数々のオペラの曲が流れ、なかなかいい。上流階級にはオペラというわけだろうか?)、ドストエフスキーの解説本などを読んで文学の知識も取り込み、あくまでも謙虚な態度でまんまと大金持ちの娘婿となることに成功する。自身アイルランド出身のリース・マイヤーズは内に秘めた憧れを実現していくさりげない計算高さを見せる男を好演。
彼より、ワタクシとしてはS・ヨハンソンを見に行ったのだが、うーん、「真珠の耳飾りの少女」の彼女の方がいいなあ。この映画では感情が爆発する場面が多かったのだが、ちょっと一本調子のような気がしたのだ。最近売れっ子でいろいろと出ているから、もう少し見てみて評価したい。
その他、「ピンクパンサー」でコミカルな役を演じていた近視気味?E・モーティマー(主人公と結婚する世間知らずのお嬢様)や、「トロイ」のアガメムノンことB・コックスなど、出演者はイギリス系の人ばかりで、アレン映画常連さんは出ていないが(ヨハンソンは次作にも出るというから常連さんになる?)、それがまた新鮮。
最近やや低調気味だったアレンも新しい方向を見いだしたのかもしれない。
※次回更新は9月24日となる予定です。
« 「ニューオーリンズ・トライアル」 | トップページ | 大阪みやげ »
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 「フローズン・リバー」(2024.11.06)
- 「屍人荘の殺人」(2024.10.07)
- 「127時間」(2024.09.07)
- 「パーフェクト・ゲッタウェイ」(2024.09.02)
- 「ゆるキャン△」(2024.08.28)
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 「マッチポイント」:
» 映画「マッチポイント」 [茸茶の想い ∞ ~祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり~]
原題:Match Point
人生がすべて、テニスのネットの上のボールのように偶然で成り立っているなんて、偶然に支配されているなんて・・確かに運は大事、こうして悪が蔓延る?
クリス・ウィルトン(ジョナサン・リース・メイヤーズ)は元プロテニスプレーヤーでコーチになると、上... [続きを読む]
コメント