ジム・ケリー『水時計』
本日の本
book-4 『水時計』 ジム・ケリー著 創元推理文庫
STORY:イギリス東部の町、イーリー。凍結した川から引き揚げられた車のトランクから死体が発見され、続いて、大聖堂の屋根の上で白骨死体が発見される。記者のドライデンは調査をはじめるが・・・
☆☆☆イギリス人作家ジム・ケリーのデビュー作。昨年の本格ミステリベスト10の第4位にはいった作品である。
なかなかどっしりとしたミステリーだ。
基本の筋立てはシンプルなのだけど、伏線がたくさん張られていて、脇のストーリーもからんでくるため、一見複雑に見える。最後のそのすべてがどう収束するかを読むのが楽しみな小説である。
犯人自体は、途中でこうじゃないかな?と薄々わかってしまい、そうすると、かなり単純なミステリーに思えてきてしまうが、重厚感を増しているのは、ドライデンという探偵役の記者である。
ドライデンは、排水路での自動車事故により妻が昏睡状態に陥っており、自分だけ助かったという罪の意識にさいなまれ続けている人物。子供の頃おぼれたり、父親が水難事故で亡くなったりと、水へのトラウマに悩まされており、沼地地帯という舞台設定とともに、「水」が大きな要素をしめているのだが、この人物像が読ませる。
ラスト、自身の自動車事故へも、間接的ながら事件が関係があったことがわかるくだりは、なるほど~だった。
途中やや退屈なところもあったが、それもすべてラストにつながってたんですね。
5作目まで出ているとのことで、主人公の奥さんがどうなるかも気になるし、翻訳されたら続きも読んでみよう。
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