キャロル・オコンネル『クリスマスに少女は還る』
本日の本
book-14 『クリスマスに少女は還る』 キャロル・オコンネル著 創元推理文庫
STORY:クリスマスを前に2人の少女が消えた。15年前に双子の妹を殺された過去を持つ刑事ルージュは少女たちの行方を追う。少女を誘拐してはクリスマスの日に殺す殺人者から逃れるべく監禁された少女は脱出の機会をうかがう。
☆☆☆☆大作である。文庫で600ページ以上。
途中まではなかなか進まないが(ストーリーも)、進みはじめてからは一気にラストまで。
ストーリーは、少女たちの捜索にあたる警察側と、脱出を試みる少女たちの側と交互に語られる。
警察サイドは、15年前同じような事件で双子の妹を殺され、心に傷を負う若い刑事ルージュ、ルージュのことをよく知っているらしい、顔に大きな傷を持つ女性心理学者アリ、かつての恋人アリを今も愛するFBI捜査官アーニーなどが登場。
一方少女たちは、一人が議員の娘グウェン、もう一人が親友のサディー。このサディーがホラーマニアでいたずら好き、問題児でとってもかわっているのだが、怪我をして弱気になりがちなグウェンを励まし、あらゆる知恵をふりしぼって脱出を試みる。このサディーがけなげなキャラで印象に残る。
登場人物の数はとても多くて最初は把握するのが大変だが、個性的に絵が描かれておりそれぞれが印象的だ。
ルージュと心を通わせる自閉症気味の少年、犯人を知っていながら守秘義務にしばられ悩み続ける精神科医、15年前犯人として捕まり、刑務所でひどい目にあいながらもなんとか生き続けてきた神父・・・
様々な人物がからみあいながら、物語は収束に向かうのだが、次第に誰が犯人かよりも少女たちが助かるかどうかの方に興味がうつる。
そして、クリスマス当日。
少女たちは・・・
すべてが終わったあとにあらわれる真実は切ない。
それでも救いはある。一つのみならずもう一つの救いも・・・
いつまでも余韻を残すラストで、長い長いストーリーもこのラストのためにあったのだなと。
全編に漂う重苦しい空気が、澄み渡る。
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