【ラファエル前派展】
art-8 【ラファエル前派展】 森アーツセンターギャラリー
1月25日に始まったラファエル前派展に行って参りました。
ラファエル前派とは、19世紀半ばのロンドンで、ラファエロを規範とする保守的な美術界に反旗を翻して、それ以前のルネサンス美術に回帰しようと、ミレイ、ロセッティ、ハントの3名を中心に作られたグループのこと。
今回の展覧会は、テート美術館所蔵の作品で構成されている。
1.歴史
会場に入ると、すぐに「オフィーリア」が目に飛び込んでくるのだが・・・
これ以外にもジョン・エヴァレット・ミレイがたくさん並んでいた。ワタクシ、ラファエル前派の中ではミレイが一番好きなのでじっくりと観賞(「マリアナ」好き)。
ミレイの絵はとても細かく描かれているのだが、「オフィーリア」もしかり。
川辺の植物がまあなんと細部まで描きこまれていることか。それぞれに寓意があるらしい。オフィーリアもはかなげで美しい(モデルは後にロセッティの妻となるシダル)。
以前、テート美術館に行った際、この作品が飾ってある部屋が修復中で見られず・・・
日本でようやく見ることができたのだった(これで2回目)。
ミレイの影響を強く受けたというのがアーサー・ヒューズで、鮮やかな色が目にパッと飛び込んできた。
ウィリアム・モリスの「麗しのイズー」もあった。モデルはモリスと結婚することになるジェイン・バーデン。モリスはあまり絵が得意ではなくて(だから違う方面に進んだとか)、この作品はほぼ完成した唯一の油彩画とのこと。
2.宗教
ミレイの「両親の家のキリスト(大工の仕事場)」は、世俗的に描きすぎということで当時非難されたらしい。
ヨハネは毛皮をまとっているし、水の入ったお皿を持っているし、まあよく見ればそうだなとわかるのだけど、確かに普通の家族に見える。
ロセッティの「見よ、我は主のはしためなり(受胎告知)」も異色。天使に羽はないし、マリアも何かに追い詰められたような表情。異様に狭い空間も不思議だ。
同じくロセッティの「ナザレのマリア」は百合、そして鳩というモチーフが描かれてこれまた受胎告知なのだけど、マリアはスコップを持っているのが変・・・
スコットの「大洪水の前夜」。よくよく見ると後ろにノアの箱船が・・・が、全体的には退廃的ムードが漂う。
3.風景
ラファエル前派の風景画、なんか不思議だなあと思っていたが、どうやらそれは、近くも遠くもすべてきっちり描きこまれているから、のようだ。
ブラウンの「穀物の収穫」など(家にあるのだが)、はじめあまり好きではなかったのだけど、だんだんいいかもと思うようになってきた。
ダイスの「ペグウェル・ベイ、ケント州」にはドナティ彗星がさりげなく描かれている。解説を読まなければ気づかなかったのだが。ちょっとブーダンを連想させる絵だった。
4.近代生活
ハントの「良心の目覚め」、スタンホープの「過去の追想」など、解説によれば堕落した人間の生き方を救済の必要性を説いた・・・絵といえる。テーマも興味深くはあるが、細かく描かれた背景をじっくりと観賞した。
5.詩的な絵画
ロセッティのシダルの作品が2つあった。こうしてみると、彼女の絵もやはりラファエル前派的であるけれど、シンプル(ごてごてでない)。
シダル、ロセッティと結婚し、死産のあとほどなくアヘン中毒で死亡しており、なんとも不幸。ロセッティはモリスの妻ジェインと親密な関係になってたわけだし。むむむ、ロセッティって!
エドワード・バーン=ジョーンズの絵が登場。三菱一号館でやってたバーン=ジョーンズ展のすばらしさを思い出しつつ・・・
「クララ・フォン・ボルク」「シドニア・フォン・ボルク」、魔女シドニアが怖い。
6.美
ロセッティが7枚も!
ロセッティの絵って、みんな顔が同じってイメージがあったけれど、モデルは何人かいるんですね。ジェーン、シダルetc・・・
ジェインのイメージが強烈で、「プロセルピナ」もそう。くっりした眉、黒髪に赤い唇。
好みからいえば、シダルがモデルの「ベアタ・ベアトリクス」だろうか。ダンテの新生に登場するベアトリーチェになぞらえた絵で、鳥がくわえているのは芥子の花。シダルがアヘンの過剰摂取で亡くなったことを表しているとのこと。光が暖かく美しい絵なのだが、シダルと考えると悲しい絵である。
7.象徴主義
といえば、バーン=ジョーンズ。
「「愛」導かれる巡礼」は、ジョーンズらしい力強さと動きが感じられる作品。なんと20年もかけて完成させたとのこと。
また、まとめてバーン=ジョーンズを見たいものである。
いやはや、ラファエル前派、なかなか濃いなあ。
勉強になりました。
是非どうぞ。
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