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2014/03/22

【岸田吟香・劉生・麗子展】

art-18 【岸田吟香・劉生・麗子展】 世田谷美術館

1403211
世田谷美術館で開催されている、岸田吟香・劉生・麗子-知られざる精神の系譜-展に行って参りました。
リニューアルされたこの美術館に行ったのははじめて。
というか、前に行ったのは相当前。
駅から遠いので、なかなか行こうという気にならなくて・・・
といっても、今日久々に歩いてみたら、確かに15分以上はかかるけれど、遠いというほどではなかった。

ワタクシ、麗子像を追いかけていまして・・・
麗子像があると聞けば行くのであります。

オープニングは麗子の部屋だった。
一面、麗子。迫力!
ポーラ美術館のとか、神奈川県立近代美術館寄託の「野童女」(ちょい不気味)は見たことあったが、見たことない絵もたくさんあった。
神奈川県立近代美術館の「麗子立像」もまたはじめて。横と縦の寸法が不思議な気がするが、これ、画家自身は気に入ってたらしい。ちょっと怖い。
未完の作品などもあり、まだまだ見てないのがあるなと。

第1部:岸田吟香
第1章:吟香その人
劉生の父、吟香のことは今まで全然知らなかったのだが・・・
実に多才な人である。
ローマ字の考案者のヘボン医師の辞書編纂の手伝いをし、東京日日新聞の主筆となり、その後目薬の製造販売に乗り出し・・・
書もたしなみ、絵も描いたという。
ワタクシ、書のことはあまりわからないのだけど、味のある字である。
筆まめでたくさんの手紙が残っており、また日記も残っている。
絵に関しては、まあプロではないけれど、これまた味がある。「竹にきのこ図」など、なぜこの組み合わせ?と思ったが、おもしろい。

第2章:吟香の活動
吟香の多才な活動が紹介されている。
東京日日新聞での活躍がわかる新聞記事が展示されていたが、笑ったのは台湾での出来事を絵にしたもので、あまりに巨漢(180センチ、90キロ)だった吟香をおぶえずあきらめた現地人を描いたもの。
写真を見ても、すごいでかい人だったことがわかる。なんか、熊さんみたい(笑)。
その後、目薬を製造販売する事業に乗り出した吟香。なぜかというと、若い頃に目を患って苦労したからという。
ビジネスマンとしても優秀で、あらゆる広告をうち、宣伝に努めて売れに売れたらしい。
そういう才覚もあったんですね。

第3章:吟香と美術
吟香と画家たちとの交流を紹介するコーナー。
小林清親は、光線画で有名な浮世絵画家だが、光線画と名付けたのは吟香という説もあるという。清親は、吟香の目薬、精錡水の広告画も手がけたらしい。
よくよく見ると、「海運橋 第一銀行雪中」に描かれた女性の持った傘には岸田と書いてあったりするのだった。
高橋由一とも親しくしていたとのことで、「甲冑図」が展示されていた。この絵、好き。

第2部:岸田劉生
第1章:銀座生まれ・銀座育ちの劉生
銀座生まれの劉生が残した銀座の絵が、東京日日新聞の大東京繁盛記の随筆、新古細工銀座通の挿絵。墨で描かれているのだけど、趣がある。
銀座や築地などを描いた油彩画もあって、これはよくよく見ないと東京と思わない。パリかもと思うくらい。モダンである。

第2章:洋画家・劉生の仕事
自画像がたくさん並んでいたが、いずれもタッチが違って、劉生の画風の変遷が見てとれる。シュールな感じなのもあった。
自分のみならず、人物画は多く描いているが、近眼でモデルをあまりにじろじろ見るので、ちょっといやがられたらしい。しかし、その観察のかいあって、かなりリアルなのである。
風景画というと、近代美術館所蔵の「切通之写生」を思い出すが、イメージとしては正しい。どれもちょっとほこりのたちそうな路が描かれている。
肺結核にかかり、外に出られない間に静物画もたくさん描いていて、あまりそういうイメージはなかったものの、なかなかによい。

第3章:多芸多才の人・劉生
父親と同じく多才だった劉生、演劇論などを書いてみたり、日本画に挑戦してみたり。
ただ、劉生の日本画はちょっと微妙かなあ。
絵がたくさん描かれた日記は興味深い。さらさらと描いた絵がユーモラスでいい。この日記、読んでみたいな(岩波文庫に抜粋版があるらしい)。

第3部:岸田麗子
第1章:劉生とともに
娘の麗子もまた多才な人物だったようだ。
幼い頃から劉生の指導で絵も描いたし、演劇もやり、小説も書いたという。
麗子が幼い頃に劉生が送ったはがき(絵が描かれている)がとてもほほえましい。
そして、幼稚園~小学生の頃の麗子の絵が結構大人びていることに驚いた。

第2章:表現者としての麗子
画家としての麗子はどうか。
父親の影響のある絵もあるし、桜島を描いたものなどは、梅原龍三郎風だったりする。
日本画も描いており、日本画に関しては父親よりいいのではないかと思う(母親が日本画を描いていたのもあるのか)。
一番、気に入ったのは、劉生と写っている写真を元に描いた「1923年8月の思出」。家族の暖かい関係がわかる作品。

というわけで、今まであまり知らなかった吟香や麗子についてもよくわかった展覧会。
見応えあり。
まだの方は是非どうぞ。


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