【ザ・ビューティフル展】
art-17 【ザ・ビューティフル展】 三菱一号館美術館
三菱一号館美術館で開催されている【ザ・ビューティフル-英国の唯美主義1860-1900】に行って参りました。
ラファエル前派展のチケットを提示すると200円引きに(相互割引き)。
唯美主義とはあまり聞き慣れない言葉だが、ラファエル前派の後継という単純なものでもないようだ。若干かぶっているところはあるのだが。ただただ視覚的な美しさを追求した唯美主義。絵画のみならず、家具や調度品、装飾品などにも及んだ芸術運動である。
ヴィクトリア&アルバート博物館の所蔵品を中心にテート他から約140点を集めた展覧会。ヴィクトリア&アルバートは大変広く、見るのも大変なのだが(以前ロンドンに行った際には最終日、空港に向かう午後2時か3時くらいまで見て回ったが全部見きれなかった)、この展覧会はそれを何十分の一にしたような感じ。
序
まずは、孔雀が描かれた鮮やかな大皿とひまわりの柵から。
唯美主義では孔雀、百合、ひまわりがモチーフとして使われたそう。
ひまわりの柵、素敵。でも我が家には似合わないな(笑)
「美術職人集団」
バーン=ジョーンズ、ロセッティ、モリスといったおなじみ芸術家が並んでいた。
この3人を唯美主義と言っていいのかは微妙なところではあるが・・・
とはいえ、バーン=ジョーンズの「ヘスペリデスの園」は美しい。板を彫って金箔を貼って描かれたもののようだが、流れる髪と青いドレスが印象的。
新たな美の探究
ロセッティの「愛の杯」は画家の好きな顔の女性が描かれる。ドレスの色がパッと目に飛び込んでくる。「エリザベス・シダルの頭部」も展示されていた。
しかし、もっと強烈な印象を受けるのは隣のフレデリック・レイトン「パヴォニア」。漆黒の髪と、真っ白な肌、そして孔雀の羽根。これは目を惹きつける絵だ。
ロセッティ、唯美主義か?と思ったが、この作品などはその範疇に入れてもよさそうだ。
攻撃-「詩の肉体派」論争
ロセッティなどの詩集。
唯美主義はともすると不道徳であるとか破廉恥であるとか非難されていたようで、ロセッティはその攻撃に耐えきれず心を病んでしまったらしい。
遠い過去、遙かなる場所Ⅰ ジャポニスム
唯美主義はまた日本の影響も受けたという。
なるほどねと思うものもあれば、これは中国風?南国風?と思えるものもあった。
遠い過去、遙かなる場所Ⅱ 古代文化という思想
日本文化のみならず、古代文化にも共鳴した唯美主義。
今回、新たな発見というか、いいかもと思ったのがアルバート・ムーア。
「黄色いマーガレット」はギリシャ風でもあるけれど、扇子や花瓶が日本風。
アルマ=タデマの「目に見えている結末」もよかったが、デザインを手がけた蛇の腕輪がおもしろい。
唯美主義運動とブローヴナー・ギャラリー
こちらにもムーアが。「花」であるが、これキレイ。
ワッツの「愛と死」はドラマチックで、唯美主義?ワッツは、ロセッティの影響を受けつつ、どちらかといえば次第に象徴主義への方向へ進んでいったようだ。まあこのあたりは密接な関係性があるということでしょうね。
「美しい人々」と唯美主義の肖像画
フレデリック・レイトンの「母と子(さくらんぼ)」がかわいい。よく見ると、白百合が描かれているし、鶴の金屏風も背景にあってまさに唯美主義。
リッチモンドの「ルーク・アイオニディーズ夫人」もまた唯美。日本風の壁紙、古代風のソファーなど。
バーン=ジョーンズのブローチがまた美しい。鳥の目はルビーだがそれ以外はそれほど高価な材料は使っていないとのことである。
「ハウス・ビューティフル」
アンナ・アルマ=タデマの「タウンゼント・ハウス応接間、1985年9月10日」は自宅を描いているのだが、いやーゴージャス。ちょっとゴテゴテすぎるくらいの装飾で、自分で住むとしたら微妙だが(笑)、見たらきっとため息が出そうだ。
クレインの「奥方の部屋」には団扇が飾られていて、やはり日本文化のブームだったのですねぇ。扇子じゃなくて団扇というのがおもしろい。
「美術産業製品」-唯美主義のデザイナーと営利企業
壁紙というとウィリアム・モリスを連想するけれど、他にも素晴らしいものはたくさんある。他にタイル、皿、壺、家具など。
この中ではバーン=ジョーンズとダールのタペストリ「ポモーナ」が気に入った。ポモーナ=果実の女神というだけあって、背景は果樹など。
ホイッスラーとゴドウィン
ゴドウィンがホイッスラーの自宅ホワイト・ハウスを設計したという関係。きっと素敵な家だったんでしょうねぇ。飾り戸棚なども展示されていた。
また、ホイッスラーの絵画「ノクターン」も。花火を印象派的に描いた絵とのことなのだが、もっと抽象的な感じ。花火と言われなければ、パッと見はなんだろうと思う。
ホイッスラーのエッチング
ラスキンが「ノクターン」をはじめとする絵を酷評し、ホイッスラーがラスキンに対し名誉毀損の裁判を起こして勝訴するものの、賠償金はわずか1シリングで、ホイッスラーは破産してしまう。
それでお金を稼ぐために、エッチング集を作ったという。
テムズ川、ヴェニス、アムステルダム、どれもいいんだけれど、一番好きなのはテムズ川のかな。
オスカー・ワイルド、唯美主義運動と諷刺
唯美主義の芸術家たちは、諷刺の対象ともなったという。退廃的、不道徳といったレッテルを貼られてしまったのは不幸なこと。
オスカー・ワイルドが投獄されたスキャンダラスな事件の影響が大きかったようだ。
「美しい書物」
それまで書物の装丁はシンプルなものだったらしいのだが、唯美主義を経て、綺麗な本が出現した・・・らしい。オスカー・ワイルドの「幸福の王子、その他の物語」がよかった。
「唯美主義におけるデカダンス」
唯美主義も最後は退廃的な方向へ。
ビアズリーのサロメはちょっと不気味。首が・・・
シメオン・ソロモンもオスカー・ワイルドと同じ罪で投獄された画家だが(最後は救貧院で一生を終えたそう)、幻想的で悪くはない。
輝かしい落日-唯美主義後期の絵画と「ニュー・スカルプチャー」
写真の展示もあったが、最後に飾られていたアルバート・ムーアの「真夏」がやはり素晴らしい。最後の方のデカダンスに気分がどんよりしかけたところに、あの鮮やかな色!
そして、三美神のようなギリシャ風の女性と日本風の扇子と。
これこそ、唯美主義!な絵画でしめくくり。
ラファエル前派に行った方は続けてどうぞ。
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