【バルテュス展】
art-32 【バルテュス展】 東京都美術館
東京都美術館で開催されているバルテュス展に行ってまいりました。
賞賛と誤解だらけの、20世紀最後の巨匠と副題にあるが、今まで見たことのある絵は、誤解される部類の絵で、まあしかし、まとめて見たことはないから、ワタクシにとっては謎の多い画家の一人であった。
第1章 初期
バルテュスはポーランド系貴族の血をひき、パリで生まれている。
父と別れた母の新しい恋人がリルケで、そのリルケが是非出版をと序文を書いたのが、「ミツ」。飼い猫ミツとの出会いから失踪までを40枚の絵に描いた本で、これはなんと11歳のときの作品。才能あるなあ。
また小さい頃から日本や中国に興味があったとのことで、中国のモティーフが描かれた戸棚などもあった。
パリのリュクサンブール公園、オデオン広場などを描いた風景画は、まだまだ特徴は際立っていないフツーの絵。風景画というイメージはあまりなかったが、なかなかよろしい。
第2章 バルテュスの神秘
イギリスを訪れた際の風景に魅了され、「嵐が丘」の挿絵を描いたバルテュス。
このあたりになってくると、バルテュスらしい人物のポーズが登場している。この挿絵を描いた頃、婚約者のいる女性との恋に悩んでいたバルテュスは「嵐が丘」に自分を重ね合わせていたという。そう聞くとヒースクリフがバルテュス自身に見えてくる。
「キャシーの化粧」は挿絵の1枚を油絵で描いたものだが、それぞれが別の方向を向いており、ハッピーエンドにはなりえないなと思わせる。
「獣たちの王」は猫を従えた自画像だが、足が長すぎる!
そして、バルテュスといえば、少女と室内と猫。
とりわけ、この時期、少女を多く描いており、せっかくのはじめての個展は、スキャンダラスな展覧会というレッテルを貼られている。
確かにね~
この少女たちのポーズ、挑発的すぎる・・・でも不思議な魅力があるんですよね。
バルテュスは幾何学的な構図を意識していたようで、ちょっと無理では?という姿勢の絵もあった。
「夢見るテレーズ」、「美しい日々」あたりが有名な絵だろうか。
ちょっと怖かったのは、「おやつの時間」。少女の表情のなさもそうなのだけど、パンにナイフが・・・
好きなのは「地中海の猫」。めずらしく全体に明るいこの絵が、あるレストランのために描かれたものとのこと。これ、レストランにかかってたらうれしいなあ。なんか幸せになれる絵。
第3章 シャシー
ブルゴーニュ地方、シャシーに住んでいた頃の絵。作風は変化している。
田舎の風景を描いた絵は、セザンヌ風?風景画も幾何学的要素が大きい気がする。
一方人物画はぼんやりした感じで、背景もシンプルである。
第4章 ローマとロシニエール
ローマのアカデミー・ド・フランスの館長となったバルテュスは日本古美術展の準備のため来日、節子夫人と出会う。
「トランプ遊びをする人々」は歌舞伎の見得に着想を得たらしい。うーん、これはおもしろい。
節子夫人をモデルにした絵もあり。
「朱色の机と日本の女」、一連の少女の絵のようにちょっと挑発的。そして、構図が不思議。
アトリエが再現されていたり、バルテュスの持ち物や写真の展示などもあった。
バルテュス、着物をよく着ていたようだが、とても似合いますね。
とても充実した展覧会でした。
バルテュスをよく知ることができるこの展覧会、是非どうぞ。
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