「善き人のためのソナタ」
本日の映画
movie-51 「善き人のためのソナタ」 Das Leben Der Anderen 2006年独
DIR:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
CAST:ウルリッヒ・ミューエ、マルティナ・ゲデック、セバスチャン・コッホ
STORY:壁崩壊前の東ベルリン。国家保安省の優秀な局員ヴィースラー大尉は、反体制の疑いのある劇作家ドライマンとその恋人の女優クリスタの監視を命じられる。盗聴器を仕掛け、監視を開始するが、次第の2人の世界に共鳴していく。
☆☆☆☆アカデミー賞外国語映画賞受賞作。
この夏、ベルリンを旅行することになり見た映画(出かける前に見てます)。
映画は創作だけれど、実際に国家保安省(シュタージ)の監視活動、弾圧はあったわけで、いやはや怖い世界である。誰に密告されるかわからない、誰が密告者なのかわからない社会。人間不信に陥りそうだ。
主人公の一人は、シュタージのヴィースラー大尉。
淡々と仕事をこなし、大変優秀な局員。
ターゲットとなったのが、もう一人の主人公、劇作家のドライマン。芸術に生き、愛に生きる自由人。
ヴィースラーはにこりともせず、機械のように任務をこなすのだが、私生活は寂しい。家にはほとんど家具もなく、無機質。趣味もなく、恋人もいない寂しい人生。
対照的にドライマンの家は、明るく暖かく、音楽、文学、その他芸術が溢れている。
そんなドライマンの家に盗聴器をしかけ、監視するうちに、徐々にヴィースラーに変化が。
非人間的な・・・国家のロボットのようなヴィースラーがついには監視対象を助けることになり、失脚してしまうのである。
彼を変えさせたのはなんだったのだろうか。
芸術家の自由な生き方か、芸術そのものか、愛か・・・
あるいは、これは単なるきっかけで、すでに変わる要素は自身の中にあったのかもしれない。
なんともやりきれない話ではあるけれど、ラストは希望もある。
ドライマンの本が自分の為に書かれたことを知って、わずかに微笑むヴィースラー。
静かな感動で終わる映画である。
ヴィースラーを演じたミューエは、実生活ではシュタージに監視された過去があるそうだが、逆の立場を好演。この映画の1年後に亡くなってしまったのが残念だ。
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