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2015/01/05

【ホイッスラー展】

art-3 【ホイッスラー展】  横浜美術館

1501051
1月3日、横浜美術館で開催中のホイッスラー展に行って参りました。
ホントは2日に出かけたかったのですが、横浜美術館は3日から。
それほど混んでいなくて快適に観賞できました。ホッ。

第1章 人物画
大きく3つのパートから構成される展覧会、まずは人物画から。
はじめは「灰色のアレンジメント:自画像」。
首から下は描き込みが足りない気もするけれど、前髪の一房の白髪はさっと描かれている。
次の2枚は、「農夫」、「煙草を吸う老人」で、いずれも写実的な肖像画。タッチは異なっているが。アメリカ生まれのホイッスラー、21歳の時に画家を志しパリに渡り、クールベと出会って写実主義の影響を受けている。こうして、初期は写実主義的な作品が結構多いのである。その後、ロンドンに移住したホイッスラーはラファエル前派の画家たちと親交を深め、唯美主義的な作品へと移行していくわけだが。
このあと、パッと目に入ってくるのが「灰色と黒のアレンジメントNo.2:トーマス・カーライルの肖像」。これ、あの「灰色と黒のアレンジメント:母の肖像」と同じ構図。そっくり。と思ったら、この作品を気にいってカーライルがモデルを引き受けたということらしい。これも落ち着きのあるいい絵。
お隣に「黒のアレンジメントNo.3:スペイン王フェリペ2世に扮したサー・ヘンリー・アーヴィング」。影響を受けたと言われるベラスケス風。
黒や灰色のイメージが大きいホイッスラーだけれど、違う色の作品も。
「黄色と金色のハーモニー:ゴールドガール」はその題名通り金色(ややくすんだ)、「ライム・リジスの小さなバラ」や「赤と黒:扇」は赤が印象的。
今回の展覧会、リトグラフ、エッチング、ドライポイントなどの小さな版画作品が多いのだが、これがまたどれもいいのだ。
ホイッスラーは50を過ぎて、2まわりほど下の女性ビアトリクスと結婚しているが、その頃に作られたリトグラフは幸せに満ちている。たった一枚をのぞいて・・・
「バルコニーの傍で」は若くして亡くなったビアトリクスが末期癌で伏せっている様子を描いているのだが、試し刷りしただけで(つらすぎて)原版を壊してしまっており、現存するのは4点のみとのことだ。

第2章 風景画
昨年、【ザ・ビューティフル展】で、ホイッスラーの風景版画を結構見ていて、風景画は楽しみにしていた。
ホイッスラーって橋マニア?って思うほど、橋の絵が多かったりするのだが(笑)・・・
はじめはやはり写実主義的な作品が多い。
「茶色と銀色:オールド・バター・シー・ブリッジ」(渋い色味の絵)や「オールド・ウェストミンスター・ブリッジの最後」など、細かいところまで描かれている。
一連のエッチング作品集「テムズセット」も驚くほど細かくて(小さな人物に至るまで)じっくり見ているとおもしろい。
「ブルターニュの海岸」などは、ホイッスラーにしては変わった絵のように思えるが、転換点となったのが「肌色と緑色の黄昏:バルパライソ」とのこと。写実主義に行き詰まったホイッスラーがチリに渡って描いた絵である。水を表現する色がおもしろい。
この後の時期に作られたエッチング・ドライポイントの作品集「ファースト・ヴェニス・セット」、「セカンド・ヴェニス・セット」は「テムズセット」の頃の作風とは違っている。
水彩画の展示もたくさんあった。
にじみなども効果的に生かしており、ささっと描いているようだけれど、なかなかよい。

第3章 ジャポニスム
当時の多くの芸術家のように、ホイッスラーもジャポニスムの影響を受けている。
東洋の品々が描かれた作品としてまず「紫とバラ色:6つのマークのランゲ・ライゼン」。東洋的な服装をした女性が花瓶?に絵付けをしているところを描いているが、他にもたくさんの壺やらお皿が描かれている。
「白のシンフォニーNo.2:小さなホワイトガール」にも壺、朱色の椀、団扇などが描かれているが、白いドレスの女性(当時の恋人ジョー)の対比がおもしろい。しかし、右からの横顔はキレイなのに、鏡に映った顔は疲れ切っていてとても同一人物とは・・・
こちらの方が好きかなあ白のシンフォニー。「白のシンフォニーNo.3」。寝椅子にに寝そべった女性(ジョー)の格好が腰が痛そうというのがあるのだが(笑)、雰囲気が好き。
風景画では、ホイッスラーが影響を受けたとされる浮世絵(大英博物館蔵)も同時に展示されており、比較で見るとおもしろい。中には、これ、ホントに影響受けてる?ってのもあるけれど。
まあでも構図などは確かに浮世絵的ではある。非常に大きな近景と小さな遠景とか、バルコニーの向こうに見える水の風景とか、大胆に一部分だけを切り取る構図とか。
広重の橋と比較されていた「ノクターン:青と金色-オールド・バターシー・ブリッジ」、これいいですねぇ。今回の展覧会で一番気にいった作品かも。青の中にぼんやりと浮かぶ橋。美しい。
この他にも「ノクターン」の作品はたくさん来ていたが、「ノクターン・ソレント」、「青と銀色のノクターン」なども好き。

ピーコックルーム
ピーコックルームとは、パトロンのレイランドのダイニングルームの装飾。
ホイッスラーの絵とレイランドの東洋陶磁器コレクションを飾るべく作られた部屋だが、建築家の都合が悪くなり、急遽ホイッスラーが手がけることになったものの、勝手にデザインを変更(それも相当)し、さらには勝手に内覧会まで開いて、パトロンとの関係が悪化した・・・(そりゃそうでしょう)
それでも、レイランドはそのまま使い続け、その後アメリカに移築され、現在はフーリア美術館にその部屋はあるという。
今回は映像での紹介だったけれど、本物見てみたいなあ。ただし、あまり落ち着けないと思う、この部屋(笑)。

久々の回顧展だそうです。
是非どうぞ。

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