ジェイムズ・トンプソン『極夜』
本日の本
book-6 『極夜』 ジェイムズ・トンプソン著 集英社文庫
STORY:フィンランド郊外の村で、ソマリア移民の女優の惨殺死体が発見される。容疑者は捜査にあたるカリ・ヴァーラ警部から妻を奪った男。やがて第2、第3の殺人が起きて・・・
☆☆☆フィンランド産ミステリ。
といえば、レーナ・レヘトライネンのマリオ・カッリオシリーズしか読んだことがないのだけど、こちらは作者がフィンランドの女性と結婚し住んでいるアメリカ人(先頃急逝されたとのこと)。
主人公のヴァーラ警部の妻をアメリカ人に設定しており、自身が思うところを妻の口から語らせている、と思われる。そういうアメリカ人の視点が入っているところがレヘトライネンの小説とは違うところ。
のみならず、こちらはひたすら暗い。
事件の内容も凄惨を極める、というのもあるのだが、舞台が極夜・・・一日中太陽が出ない日・・・白夜の反対・・・で暗さをさらに助長する。
雨が続くだけで、ちょっと鬱々とした気分になるワタクシなど、ずっとお日様が出ないとなるとどうなるんだろう。
それも一因か、フィンランドではアルコール問題が深刻で、また犯罪率も案外高いらしい。また人種的な差別も少なからずあるという。
北欧といえば、美しく雄大な自然とおいしい(ワタクシの口にはとてもあう)お料理、のイメージなのだけど、どんな国にも暗部はあるわけで・・・その暗部を描いたミステリなのである。
登場する人物たちもそれぞれが心の闇をかかえ、一癖も二癖もある人たちで、読んでいておもしろい・・・というよりはどちらかと言えば気が滅入るのだけど、ページをめくる手がとまらないという・・・
救いのないお話の中で、最後に少しだけ救いが。
といっても、次作はどうなるんだろう。やはり続きを読まざるをない。
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