【グエルチーノ展】
art-15 【グエルチーノ展】 国立西洋美術館
土曜日、仕事を終えて行ったのが【グエルチーノ展】。
グエルチーノ?
あまり記憶にない画家だが、少なくとも2点は見たことがあるのであった。
西洋美術館の常設展示「ゴリアテの首を持つデヴィデ」、そして数年前【ボルゲーゼ美術館展】で見た「放蕩息子」である。
グエルチーノ(やぶにらみというあだ名)はボローニャ近郊のチェント生まれのイタリアバロック美術の第一人者だった人だが、急速に忘れられ、20世紀半ば以降に再び評価が高まったとのこと。
今回の展覧会はチェント市立絵画館からの出展が多いが、チェントは2012年大地震に見舞われ、絵画館も壊滅的な打撃を受け、いまもって再開のめどはたっていないらしい。この展覧会の収益の一部は再建の費用に充てられるとのことだから、そういった意味でも是非鑑賞したらよいのではないか。
Ⅰ 名声を求めて
グエルチーノはほぼ独学で絵を学んだそうだが、カラッチやスカルセッリーノ(それぞれ1点ずつ展示)などから影響を受けている。
気にいったのが、「聖カルロ・ボッロメーオの奇跡」。ボッロメーオはイタリアの聖人だが、鼻が特徴的。このボッロメーオが奇跡を行う瞬間、大人たちにはそれが見えていないのだが、子供には見えているという・・・その足元に猫!めずらしや、この時代の絵に猫が描かれているとは。
「聖母子と雀」もいい。ゴシキヒワではなくて雀というのがおもしろいが、キリストと雀は糸で結ばれており、のちの受難を表している。聖母の表情がやさしい。
「ゲッセマネの園のキリスト」は、んん??となる。天使の足を描きなおしているのだが、顔料が透明化して前の足が浮き出てきてしまい、足が4本あるように見えるのである。
Ⅱ 才能の開花
この頃の絵というのは寄進者を描くことになってたんだろうか?いくつかそういう作品があったが、何も描かなくとも・・・逆に払いがよくないと、部分的に弟子に描かせるとは(笑)。しっかりしてるな~
「キリストから鍵を受け取る聖ペテロ」は大きな作品である。迫力。
グエルチーノ、明暗をくっきり描く画家であるが、「ロレートの聖母を礼拝するシエナの聖ベルナルディーノと聖フランチェスコ」などは明と暗の対比がよく出ている。
「マルシュアスの皮をはぐアポロ」は、有名なアポロとマルシュアスの競争が主題だが、うーん、なんというか生々しい。
「聖イレネに介抱される聖セバスティアヌス」。セバスティアヌスのこういう姿(矢が突き刺さった絵じゃなくて)はあまり見たことがないのだが、これも生々しいというか痛々しい。
この絵の中に登場する聖イレネのそっくりさん(ほぼ同じ)に描かれているのが「巫女」という作品。
Ⅲ 芸術の都ローマとの出会い
ボローニャでグエルチーノを重用していた枢機卿が教皇に選ばれると、ローマに呼ばれわずか数年ではあるがローマで活躍する。
代表作の1つともされる「聖母被昇天」が描かれたのもこの頃。
ダイナミックな絵。
「放蕩息子の帰還」は題材はあまり好きではないのだけど、犬がポイント!
ローマからボローニャの戻ったあとの作品として「聖母と祝福を授ける幼児キリスト」。窓から注ぐ光が聖母子にあたり美しい。
「聖母のもとに現れる復活したキリスト」は服の質感がポイント。人物よりそちらに目がいってしまう。
Ⅳ 後期1 聖と俗のはざまの女性像-グエルチーノとグイド・レーニ
グエルチーノのよきライバルであったグイド・レーニ(グエルチーノよりレーニの方が知名度は高いですね)が2点あった。レーニはグエルチーノとはまったく反対で、モデルを使わず、素描もなく直接描いたらしい。
レーニも悪くはないが、これだけグエルチーノを見ていると、グエルチーノの方がいいように思えてきた。しかし、この頃からグエルチーノはレーニの影響を受けた作風に変化していっているんですね。
この頃のコレクターや注文主は残酷な絵を好まなかったとのことで、胸を剣でついて自害したルクレチアの絵は、その部分を切り取ったり、血は消されたりしていた。
Ⅴ 後期2 宗教画と理想の追求
ヨハネが主題の絵が2枚。
「説教する洗礼者聖ヨハネ」、一瞬、キリストかと思ったのだが・・・
よく見ると、毛皮をまとっており確かにヨハネ。ちょっと美形すぎるような・・・
西洋美術館所蔵なのが「ゴリアテの首を持つダヴィデ」。確かに、この絵、よく見ているのだけど、今までグエルチーノという名前に注目したことがなかった。
今回、しっかり記憶致しました。
チェント市立絵画館、早く復旧できるといいですね。
バロック絵画が好きな方、是非どうぞ。
作品数は少ないですが、充実しています。
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