【ダブル・インパクト展】
art-18 【ダブル・インパクト展】 東京藝術大学大学美術館
藝大美術館で開催されているダブル・インパクト展に行って参りました。
ボストン美術館と東京藝術大学の2つのコレクションを、日本と西洋との互いの影響関係から見る展覧会。
おもしろいコンセプトですね。
プロローグ 黒船が来た!
黒船来航により開国することになった日本。
その様子を描いたのが「ペルリ浦賀上陸図」。記録画的な絵。
三代目歌川広重の横浜を描いた浮世絵も興味深いが、外国人があまり外国人らしくないのはご愛敬。
インパクトがあったのは、河鍋暁斎の2枚。波がうねっている。
高橋由一が2枚。おなじみ、「花魁」はなんか不思議なのだけど印象に残る。
初公開というのが、「浴場図」。ワーグマンが描いた絵の模写という。大勢が一緒にお風呂に入るという風習は今も、外国人は驚くのだろうなあ。
第1章 不思議の国JAPAN
欧米に紹介されることになった日本の工芸や絵画。細かい細工に驚いたに違いない。
鈴木長吉「水晶置物」の竜の置物部分が見事だが、竜といえば、高石重義の「竜自在」。2メートル近い龍の置物だが、関節がすべて自在に動くのだ。X線写真が置いてあって構造はわかったのだけど、実際に動かしてほしかったなあ。無理でしょうけど。
細工の細かさでは旭玉山の「人体骨格」。30センチちょっとの骨格像なのだが、鹿の角を彫ったもの。いやはやよく出来てる。
絵は、なんといっても河鍋暁斎。「風神・雷神」もいいのだけど、「地獄太夫」がさらにいい。クリーブランド美術館展で見たものよりユーモラスな図。まわりで骸骨が踊っていたりして。
第2章 文明、開花せよ
ボストン美術館所蔵の錦絵コレクションから。
揚州周延、豊原国周、三代歌川広重など、まさに文明開化を描いているわけだが、色が鮮やかなこともあって、全体に派手。洋装の女性が描かれたものなど、なんか不思議な感覚に陥る。これもまた浮世絵なんですよねぇ。
うれしかったのは、小林清親が何点もあったこと。
猫展でも見た気がするが、「猫と提灯と鼠」好きだなあ。提灯に逃げ込んだ鼠のしっぽをつかまえた猫。鼠、万事休すの図。「鶏に蜻蛉」といい、動物を描いたものもいいな。
清親、今年はたくさん見られそうでうれしいですね。
第3章 西洋美術の手習い
日本に西洋美術を紹介する重要な役割を果たしたワーグマン、フォンネージ、ラグーザの作品と、彼らに教えを受けた画家たちの作品。
今まであまり注目していなかったけれど、彫刻家ラグーザの作品はなかなかいいかも。
この他、気にいったのはミレーの模写、高橋由一の「農夫」、浅井忠の「風景」。
第4章 日本美術の創造
開国以来、西洋美術に傾きかけていた日本だが、伝統美術を見直そうという気運が高まり、伝統的な様式と西洋画法を融合した日本画が描かれるようになる。
日本画の父、狩野芳崖の絶筆「悲母観音」。今回はこの作品とともに、弟子で岡倉天心の甥、岡倉秋水の模写もボストンからきていた。鮮やかな色。
ワタクシ的には、ボストン所蔵の「谿間雄飛図」の方が好き。
本邦初公開なのは橋本雅邦の「雪景山水図」。修復が行われたようできれい。
驚いたのは、大観の朦朧体作品。こんな作品もあったんですね。国内では不評だったようだが、アメリカでは好評だった模様。実験的な絵だとは思うが。
もう一つの驚きは、小林永濯の作品。ポスターにもなっている「菅原道真天拝山祈祷の図」は、漫画チック。そして、確かに縦の伸びた図、色彩はグレコ風でもある。
そして、ボストンから来ていた大きな屏風2点のうち、気にいったのは、西村五雲の「熊図屏風」。めずらしや、シロクマが描かれている。
第5章 近代国家として
日清、日露戦争で勝利し、近代国家となっていった日本。
神話を題材にした歴史画、戦争画が流行する。
小林清親も戦争錦絵を描いたようで、2枚展示されていた。これもまた光線画の一種といえなくもない。
ヨーロッパに留学した画家たちの作品も。
こういう視点の展覧会も楽しいですね。
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