【ヘレン・シャルフベック展】
art-34 【ヘレン・シャルフベック展】 東京藝術大学大学美術館
昨日、シャルフベック展に行って参りました。
ヘレン・シャルフベックという名前は今回はじめて知った名前。
フィンランドの国民的画家とのことだけど、多分、今まで見たことないんじゃないかなあ。もしかしてヘルシンキの美術館で見たことがあるのかもしれないけれど記憶なし。
いやーまだまだ知らない画家はいるものだなあ。
第1章 初期:ヘルシンキ-パリ
3歳の時大けがをし、学校に通うことができなかったシャルフベックは家庭教師に素描の才能を認められ、11歳で芸術協会で素描を学ぶことを許されたという。
相当の才能だったんでしょうね。確かに、初期の頃の作品、正確な筆致で上手い絵である。オーソドックスな絵画で、ある意味教科書的。その後、「扉」とか「洗濯干し」などやや実験的な絵もあるものの、正しいイメージの絵が多い。
ブルターニュの貧しい少年少女を描いた絵なども素朴でいいけれど、やはり「快復期」の少女がかわいらしくていいなあ。失恋から立ち直りかけた時期に描かれたものとのことで、病気から回復しつつある少女に重ね合わせたという。この絵でシャルフベックは国際的な名声を得ている。
初期の頃の絵、とてもいい。
第2章 フランス美術の影響と消化
フランスの絵画から大きな影響を受けたシャルフベック。
静物画がセザンヌ的だったり、フレスコ画風の絵はシャヴァンヌ的だったり、ナビ派の影響を受けたと思われる絵もあり、ゴーギャン風のも。
そうした意味では、この頃の絵画は方向性が定まっていないとも言えるが、いろいろな画風にチャレンジしてみようということだったのだろう。
「お針子」という絵は、まさにホイッスラーの「母の肖像」で、これは遠くからでも、ホイッスラー!と思いましたね。
第3章 肖像画と自画像
シャルフベックは自画像や肖像画を多く描いている。
オーソドックスに描いた自画像がよいと思うが、結構実験的なものもあったり、抽象化されたものもあったり、いろいろである。
自分の心情が投影されることが多い人だったのか、失恋後の「未完の自画像」は目がつぶれていてひっかき傷もあり、怖い。
「ダークレディー」や「諸島から来た女性」なども色調が暗く、自身の暗い気持ちが反映されていたのかもしれない。
失恋した相手、エイナル・ロイターを描いた絵は顔がぼんやりしていて、これまた怖い。
第4章 自作の再解釈とエル・グレコの発見
母の死後、違う土地に移りすんだシャルフベックだったが、モデルとなる人物になかなか出会えず、画商のアドバイスで、昔描いた絵の『再解釈』に基づく絵を描き始める。
その絵が並べて(あるいは「お針子」は振り向くと若い頃の作品が見える)展示されていたが、一言でいうと、若い頃は具象絵画、年取ってからのは抽象絵画である。年取ってからの方がおもしろいけれど、やはり好きなのは若い頃だなあ。
その頃、もう一つのテーマとなったのはエル・グレコで、エル・グレコ的絵画をたくさん描いているようである。といってもエル・グレコ+キュイビズムといった絵画で、シャルフベックの個性が出ている。
第5章 死に向かって:自画像と静物画
シャルフベックは死の直前、多くの自画像を描いている。
衰えゆく自分を残酷なくらいに描いており、鬼気迫るものが・・・
骸骨のようであったり、ほとんど溶けて形がなかったり。ちょっと痛々しいくらいだが、冷静に自分を見つめていたということかもしれない。
静物画に関しても、若い頃は明るい色彩の絵だったものが、腐った黒いりんごを描いてみたり(これはセザンヌ的とも言えるけど)、やはりシャルフベックの心の反映なのだろうか。
めずらしい展覧会を見ることができました。
会期はあと少しですので、是非どうぞ。
上野公園の猫。大あくび中!
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