【恩地孝四郎展】
art-13 【恩地孝四郎展】 東京国立近代美術館
先週、有休消化でちょくちょく数時間のお休みをもらっていたのだが、それを利用して行ってきた展覧会である。
恩地孝四郎の名前は昨年まで知らず・・・
行きたかったのに行けなかった【月映展】で知って、つい先日日曜美術館でやっていたのを見て、これは是非行かねばと思っていたのである。
版画(P)、ドローイング(D)、本の装丁(B)、油絵(O)、写真(Ph)でそれぞれ通し番号がついていた。
Ⅰ「月映」に始まる
恩地孝四郎といえば、やはり月映。
若い画学生3人が作った木版画と詩の雑誌。熱意と創造性に満ちた雑誌もメンバーの1人、田中恭吉の死でわずか1年あまりで終了しているのが残念である。
恩地の作品は、一見して何を描いているのかわからないものも多く、タイトルを見てああなるほどと思ったり、それでもわからなかったり。とにかく1枚1枚丹念に見ていくと時間のかかること!
この延長線上に本の装丁があるのだろうか。
元々は、田中恭吉に依頼していたという萩原朔太郎の「月に吠える」は、田中の死で恩地に引き継がれ完成されている。
その他、室生犀星、武者小路実篤、北原白秋、ボードレールなどなど。
どれも、作品の(全部読んだことがあるわけじゃないけれど)雰囲気にあっている・・・気がする。
案外気にいったのは、ドローイング。ささっと描いたように見えて結構緻密。
この頃の版画やドローイングと違い、油彩画はわりと大胆で力強い。
レモンや林檎といった静物画は限りなくフツーに近いけれど、死んだ鳩がモチーフの絵はちょっと怖い。
Ⅱ画・都市・メディア
まず気にいったのは「美人四季」シリーズ。冬の黒猫がかわいい!
「今代婦人八態」もいい。風俗画的要素あり。「帯」シリーズは雑誌の表紙のような。ほのぼのとした作品。
人体考察シリーズは、人体を部分部分に分けて描いており、なんとなくここの部分とわかるものもあるが、究極的に抽象化しているのもあり・・・これを1枚にまとめるとどうなるのか?ピカソになるのか・
そして風景版画。正直、こういった作品もあるんだとびっくりした。
他の版画家も参加しているという「新東京百景」シリーズである。
「邦楽座内景」、「日比谷音楽堂」など、客席の後ろから描いていて構図が大変おもしろい。
「音楽作品による抒情」シリーズは、演奏を聴いて作品にしたものだそうだが、こうなると実際にその曲を聴きながら鑑賞してみたいものだ。違う絵が浮かんできちゃいそうだけど。このシリーズは好き。
海、山、野をテーマした作品たち。色彩も明るく楽しい絵たち。このつながりか、博物誌シリーズ(写真)は少々グロテスク。
Ⅲ抽象への方途
戦後、GHQ関係者たちがこぞって恩地の作品を買い上げたとのことで、ずいぶんと海外に作品がいってるんですね。抽象美術が人気を博したとのことで、晩年はさらに抽象的な方向へと向かっている。
カンディンスキーっぽい作品あり、ミロ的なものもあり。
というわけで、結構好きなジャンルである。
フォルム、アレゴリー、ポエム、リリック、コンポジション、即興、オブジェなどというタイトルがついていると、いったい何を描こうとしたのだ?と思ってしまうけれど、副題を見るとああそういうことね、とわかる仕掛け。例えばイマージュNO.7シリーズなどは、黒猫とされていることからああなるほど、と。しゅっと座っていたり、後ろ足をぎゅっとしていたり、コロンとしていたり。
亡くなる前に作成していたシリーズ、オブジェは、実在物を転写するという方法での版画で、おもしろいなあ。斬新。
とても見応えのある展覧会でしたが、残念ながら2月28日で終了しています。
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