【速水御舟の全貌展】
art-55 【速水御舟の全貌展】 山種美術館
山種美術館で開催されている、開館50周年記念特別展・速水御舟の全貌展に行って参りました。
山種といえば御舟。
ということでしばしば見ているが、御舟だけの展覧会は、ワタクシははじめて。
第1章 画塾からの出発
14歳で画塾に入門した御舟。古典を学んで、17歳の時に描いたのが「瘤取之巻」。さらさらっと描かれているように見えるが、正確な筆致。楽しい絵巻だ。
「黄昏」、「山科秋」を描いた20代前半でも引き続き南画風だが、色味が青っぽくなっている。群青への時代の入り口。
第2章 質感描写を極める
そして、群青時代の代表作が「洛北修学院村」。全面を覆い尽くす青!
その後の作品は、非常に写実的な静物画が続く。
入ってすぐに展示されていた「鍋島の皿に石榴」、「茶碗と果実」、「白磁の皿に石榴」など、こんなに写実的な作品もあったんですね。渋くて素敵。
一転、「灰燼」は、関東大震災後の街の様子を描いているが、キュビズムのような絵である。
好きな絵の一つ、「百舌巣」もあった。可愛い絵。
第3章 《炎舞》から《名樹散椿》へ-古典を昇華する
ちょっとシュールな「樹木」や、一瞬土牛?と思ってしまう「朝鮮牛図」など、いろいろな作風な作品の次は、「昆虫二題」。計算されたデザインのような二枚の絵だが、蛾を描いた絵の方は、名作「炎舞」につながる作品。
その「炎舞」は、第二会場の方に展示されていたが(いつもこちらにありますね)、幻想的に浮かびあがる蝶と激しく燃えさかる炎の強烈な赤が、いつまでも残像に残る。何度見てもすばらしい。
しかし、ワタクシが御舟の作品で一番好きなのは、「翠苔緑芝」。黒猫と白兎に目がまず行くのだが、翠と緑が主題なのかもしれない。マグネットを購入。
お隣は、「名樹散椿」。まきつぶしの金を背景として、椿がダイナミックに描かれる。
「紅梅・白梅」は山崎種三が自室に飾っていたそうだが、余白の美が素晴らしい。
第4章 渡欧から帰国後の挑戦へ
イタリアの風景を描いた写生は、ちょっと安野光雅を彷彿とさせるが、エジプト、ギリシャなどを描いた絵はエキゾチック。
御舟はあまり人物画を描いていないが、渡欧後は意欲的に描くようになったとのことで、数枚の展示があった。
とはいえ、「花ノ傍」などは、人物よりも着物と犬に目がいってしまうような・・・
晩年(といっても40歳で早世しているのだが)は新しい花鳥画が多く描いているが、ワタクシの好きな作品はまず「あけぼの・春の宵」。あけぼのと宵の対比で描かれた桜だが、淡い色が好き。
墨を用いた牡丹などの作品もいい。濃淡が美しい。
若くして亡くなっている御舟だが、思いのほか、バラエティに富んだ作品があり、常に意欲的に画業に取り組んでいたことがわかりますね。
是非どうぞ。
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