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2016/12/25

【クラーナハ展】

art-67 【クラーナハ展】 国立西洋美術館

1612251
西洋美術館で開催中のクラーナハ展に行って参りました。
クラーナハ、昨年フランクフルトのシュテーデル美術館でたくさん見たし、数年前にはウィーンの美術史美術館でもたくさん見ているが、日本でまとめて見るのははじめて。
貴重な機会です。

1:蛇の紋章とともに─宮廷画家としてのクラーナハ
ザクセン選帝侯に招かれたクラーナハは宮廷画家として活躍、また工房を構え大量生産することで事業家としても成功する。
そうした時代の選帝侯の肖像画や、宗教画の展示。
オーソドックスな作品が多いが、版画作品もたくさんあることを知った。同時代の画家デューラーとは作風は違うのだが、よくよく見ると、不思議な絵面だったり。
この章で一番気に行ったのは、「聖カタリナの殉教」。劇画調というか、カタリナの後ろで、空からビーム?火花も散ってなにやら恐ろしげである。

2:時代の相貌─肖像画家としてのクラーナハ
注文製作で、描く対象を美化しているかと思いきや、そうでもないような(笑)。いや、当時はこういう顔立ちが美人だったのか・・・
カール5世も忠実に描いているのか、しっかりアゴが出ているのだった(笑)。
肖像画というのは本人を直接知っていればともかく、そうでないと見てもふーんという感じなので、どうしても衣装の方に注目してしまう。
クラーナハはかなり細かく描いており、興味深い。この当時流行したと思われるファッションがおもしろい!

3:グラフィズムの実験─版画家としてのクラーナハ
量産できる版画は事業家クラーナハとしては重要なものだったらしい。
題材はお馴染みのものだが、多色刷りにチャレンジするなど、当時としては新しい技法のものもある。
それが、「聖クリストフォロス」。多色といっても黒と褐色なのだが、単色刷りとまた違った風合いである。
クリストフォロスの姿はなかなかにユーモラス。

4:時を超えるアンビヴァレンス─裸体表現の諸相
このあたりから、お馴染みのクラーナハ作品が並ぶ。
裸の女性たちがなんとも艶めかしく妖しい・・・
「ヴィーナス」はなぜこれがヴィーナス?と思う。不思議な体型、妖しげな表情・・・
その隣に並んでいたのが、ピカソのオマージュ作品。ピカソ美術館でラス・メニーナスの連作を見て感動したものだが、クラーナハの作品でもやっていたという・・・
「ルクレティア」も何かアンバランス、「泉のニンフ」もそう。
「正義の寓意」は、正義の象徴、剣と天秤よりもやはり、裸身の女性の方についつい目がいってしまう。

5:誘惑する絵─「女のちから」というテーマ系
「不釣り合いなカップル」の年老いた男のいやらしい目つきよりも、高価な指輪をはめてもらっている若い女性のしてやったりという表情が怖い・・・
「ヘラクレスとオンファレ」のヘラクレスの表情の情けないこと!オンファレの美貌の虜となって、デレデレしながら羊毛を紡がされているという・・・まわりの女性たちは、ヘラクレスをバカにしているよう。
そして、マグネットを買った「ホロフェルネスの首を持つユディト」は、こちらをじっと見つめるユディトの冷たい表情が印象的。ぞっとするような。
「洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ」のサロメは何か企んでいるような表情である。
ここにもまたピカソのクラーナハリスペクト作品(「ダヴィデとバテシバ(クラーナハにならって)」)があった。おもしろい。

6:宗教改革の「顔」たち─ルターを超えて
昔々、教科書で見たルターの肖像画はクラーナハが描いたものだったんだ!お馴染みの顔である。
最後に展示されていた「メランコリー」。たくさんの赤ちゃんが踊る脇で、女性がなぜかナイフで木を削っているという絵。メランコリーという言葉から想像するような絵ではなく、とても不思議。

クラーナハの妖しい世界を是非どうぞ。

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