【ブリューゲル バベルの塔展】
art-28 【ブリューゲル バベルの塔展】 東京都美術館
都美術館で開催中のバベルの塔展に行って参りました。
行った日は土曜日。
入場前の列はなかったものの、中はかなりの混み具合。小さな作品、細かい作品が多かったので、鑑賞するのは結構大変。単眼鏡が役立ちました。
Ⅰ 16世紀ネーデルラントの彫刻
展覧会は地味目に木の彫刻からスタート。
教会でよく見る彫刻ですね。
それぞれが象徴を持つ「四大ラテン教父」の重厚感。
「受胎告知の聖母」は、できれば天使もいてほしかった・・・いやあったのだが切り離されたという可能性もあるか。
Ⅱ 信仰に仕えて
何枚か聖カタリナを描いた絵があったが、当然書き込まれていると思っていた車輪がない(1枚をのぞく)。確かに剣は持ってはいるのだけれど、当時この地方では車輪はえがかなかったのだろうか・・・
ダーフィットの「風景の中の聖母子」。聖母の胸が変・・・
この章で一番気にいったのは枝葉の刺繍の画家の「聖カタリナ」と「聖バルバラ」。細かいところまでキレイに描かれている(のでこういう名が残ったのだろうか)。美しい。
Ⅲ ホラント地方の美術
オーストザーネンの「聖母子と奏楽天使たち」が一番のお気に入り。この当時演奏されていた楽器もわかる。天使がおじさん顔なのだけど、イエスが一番のおじさん顔(笑)。
ルカス・ファン・レイデン「ヨセフの衣服を見せるボテバルの妻」。企みをもった妻の無表情な顔が怖い。
Ⅳ 新たな画題へ
風景画が描かれるようになった時代。
メムリンクといえば宗教画と思うのだが、「風景の中の二頭の馬」は少々違う。風景画とも違う気がする。白馬にのる猿は愛の寓話を示したものとのこと。
北方ルネサンス風景絵画の始祖と言われるパティニールが2枚。
そのうちの1枚「ソドムとゴモラの滅亡がある風景」は聖書が主題といっても、登場人物は見えないくらいに小さく描かれている。風景がメイン。よくよく見るとちゃんとロトの妻が塩柱になったところも描かれているのだが。
ロトと娘たちのその後を描いた絵はパティニール周辺の画家。
ロマニスト(イタリアに留学しその様式を模倣しようとした)と言われるヘームスケルク「オリュンポスの神々」は確かに題材含めてイタリア絵画的?
Ⅴ 奇想の画家ヒエロニムス・ボス
この展覧会の2大目玉の1つ、ボスのコーナー。
奇っ怪なボスの絵は見ていて飽きない。そこかしこに、変な生きもの?がたくさん描かれているから。何を表しているのかわからないものも多いけれど・・・
今回25点しかない(たったそれだけ!)油彩のうち2点が来日。
1つめは「放浪者(行商人)」。
放蕩息子という説もあったかと思うが、行商人となのか。
猫の毛皮(!)やひしゃく、これは売り物?にしては取り合わせが変なような。
靴も片方はスリッパ風のものだし、衣装はボロボロ。
背後にある家は娼館とされるが、行商人は不安そうにこの家を振り返る。出てきたところなのか、通り過ぎようとしているだけなのか。
その他、これって何を表しているの?と思うものがたくさん描きこまれている。
2つめは「聖クリストフォロス」。
こちらの絵がさらに不可思議。
主題はクリストフォロスなんだけど、周辺、背後に描かれているものが、ん???なのだ。
はじめにびっくりなのが、誰か木に吊されている!と思うと熊。さらに向こう岸では変な格好の人が裸で逃げてるし、もっと遠くでは火事。龍?も見える。
クリストフォロスの杖に吊された魚は血を流し、背後の木にかかった壺にはこびと、その上にもこびと・・・
見れば見るほど謎が深まる絵。
Ⅵ ボスのように描く
この章では、ボスの絵の模写やボスの画を元にした版画が並んでいた。
不可解なもの、奇妙な人間たち、グロテスクな生きものが所狭しと並ぶ。
うーん、やっぱり飽きないですね。
ちなみに、ボスは版画には興味を示さなかったという。
Ⅶ ブリューゲルの版画
ブリューゲルは油彩のイメージがあるけれど、実際は40点ちょっとしかないらしい。
そもそもは版元から請われてボス風の版画を多く作成していて、そこかしこにボス風のキャラが描かれているのである。樹木人間もいましたよ!
「七つの徳目」や「七つの大罪」もおもしろいのだが、なんといっても「大きな魚は小さな魚を食う」。ボス的なモチーフがちりばめられているが、左上に描かれた魚人間。今回の展覧会の公式マスコットにもなっているが、ちょっとキモくないですか?(笑)すね毛まであるぞ。
ブリューゲルは農民画家をとも言われていて、「農民の婚礼の踊り」は油彩の「農民の婚宴」や「農民の踊り」を思い出した。「阿呆の祭り」はなんか楽しい。いやほんとにアホっぽい(笑)
Ⅷ 「バベルの塔」へ
さあとうとうバベルの塔!
ウィーン美術史美術館にある方のバベルの塔は現地で3回見ているが、ボイマンス美術館のははじめて(24年前に来日したときは見ていない・・・はず)。
こちらの方が小さく(思ったより小さかった)、細部を見るのは結構大変。何しろ直近で見られる列の方は一瞬たりとも立ち止まることが許されず・・・
後ろからはずっと見ていてもよいのだが、単眼鏡で見ても細部までは見えないのである。
事前に芸大に展示されていた模型を見ていたし、会場にも拡大複製画があるので、どれだけ描かれているのかは確認できるのだが、それにしても1400人もの人が描かれているとは!煉瓦や漆喰を運び上げる様子もリアル。いやはや、細かすぎる・・・
バベルの塔は、聖書のエピソードであるけれど、そんなことを忘れて、巨大建築にのぞむ人々の絵として見てしまった。この後に人々がちりぢりになる運命とは思えないのである。
ボス、ブリューゲルを是非どうぞ。
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