【ミュシャ展】
art-25 【ミュシャ展】 国立新美術館
六本木ヒルズから移動して、この日2つめの展覧会はミュシャ展。
チケット売り場で30分並ぶことに。
草間彌生展と同じチケット売り場だからかしら?と思ったのだけど、ミュシャ展も結構な混雑。いくら大きな絵とはいっても、これだけ人がいると解説を読むのが大変。
スラブ叙事詩
入り口を入るといきなりスラブ叙事詩!!
2012年まで本国でもめったに見られなかったこの作品群がすべて来日。この大きな作品をみんな持ってくるって大変だったでしょうねぇ。
いやはや、度肝を抜かれます・・・
ミュシャというと、ポスター的イメージなんでしょうけれど、実際、チェコに行ってみたら、そうではない作品がたくさんあるということを知って、へえと思ったことを思い出した。
祖国愛が強い画家、ミュシャ・・・この場合、ムハと言った方がいいような気もする。
20点全部を書き記せないので、印象に残ったものを抜粋で。
(1)原故郷のスラヴ民族
3~6世紀。他民族の侵略から身を隠すスラヴ民族の祖先。不安な眼差し、でも力強い眼差し。祭司が浮いてる??
(2)ルヤーナ島でのスヴァントヴィート祭
楽しいお祭りが描かれているかと思いきや・・・上には瀕死のスラヴ兵士やとらわれた兵士、そして、侵攻してくるノルマン人の姿が。これまた浮いてるんですけど(笑)
(3)スラヴ式典礼の導入
聖書をスラヴ語に翻訳し、正教会へと傾倒することでローマ教皇、皇帝からの独立を果たすスラヴ民族(統治者たちがまたもや浮いてる・・・)。手に輪を持った若者が実に力強い。団結の象徴とか。
(4)ブルガリア皇帝シメオン1世
スラヴ文学の創始者である皇帝を描く。
自国の言葉、そして文学は重要である。
(7)クロムニェジージュのヤン・ミリーチ
ヤン・フス改革の先駆者であるミリーチは売春宿を修道院へと改築した。悔い改めた女性たちは白い衣服を身にまとっている(ただし一番前に白いマスクのようなものをした女性がおり、この女性は異質)。この神学者のことは知らなかったですね。
(8)グルンヴァルトの戦いの後
ドイツ騎士団に打ち勝ったポーランドとボヘミアの連合軍の戦いを描く。といっても流血の場面を描くのが嫌いだったミュシャは戦いが済んだあとを描いている。そうはいっても、前面には死体が並んでいて、悲惨な感じはするのだけど。
(9)ベツレヘム礼拝堂で説教をするヤン・フス師
(10)クジーシュキでの集会
のちに火刑に書されたヤン・フス。大きく身を乗り出して熱弁をふるう様子が描かれている(9)より、その後の指導者となったコランダ司祭が説教する場面を描いた(10)の方が力強い。といっても言葉より武器という図になってるわけだが。
(11)ヴィートコフ山の戦いの後
(12)ヴォドニャヌイ近郊のペトル・ヘルチツキー
フス戦争を描いた画だが、戦争のむなしさが漂う。
(14)ニコラ・シュビッチ・ズリンスキーによるシゲットの対トルコ防衛
オスマントルコとの戦いを描くが、指揮官の妻が火薬塔に火を放ち、黒煙が上がる様子が画面を2分する黒い筋で表している。このことにより、多くの市民が犠牲になったことの暗示。
(15)イヴァンチツェの兄弟団学校
ミュシャの故郷モラビアの学校の庭で母国語の聖書を読んでいる人々の喜び。手前、盲目の老人に読み聞かせている少年は自分の若い頃をモデルという。この連作の中では最も明るい作品だと思う。これが一番好き。
(16)ヤン・アーモス・コメンスキーのナールデンでの最後の日々
亡命を余儀なくされたプロテスタント教徒たち。青白い画面が寒々しく悲しい。
(18)スラヴ菩提樹の下でおこなわれるオムラジナ会の誓い
民族主義的な団体オムラジナ会を描いたものだが、この作品のみ未完成で、お披露目の際にもこれだけが除かれたそう。なんでもハイエールヒトラーのポーズっぽい姿があるのと鍵十字っぽいものが描かれているとか。本人はそういうつもりじゃなかったと思うが・・・
(20)スラヴ民族の賛歌
スラヴの歴史をすべて盛り込み(初期~フス戦争~オーストリアハンガリー帝国の終焉)、スラヴへの賛歌を高らかに歌う。力強さと明るさに満ちた集大成とも言うべき絵。
15、17~20のみ撮影可能でした。
16年もかけて制作したこの連作も完成時には、保守的と言われ、作品を展示する美術館の建設計画も中止となり、戦後はずっと故郷の近くの城に寄託され、プラハに戻ったのは5年前。
いや~、つくづくよく持ってきたよな~と感心。
ともかく、この20枚、圧倒されます。必見!民族の歴史を勉強していればなおよし、です。
1:ミュシャとアール・ヌーヴォー
スラヴ叙事詩があまりに大きいので、その他の展示はせせこましくてみるのが大変・・・
本来ならば、このあたりの絵がまさにミュシャ、なのだけれど、スラヴ叙事詩を見たあととなっては、まあそうねって感じ(笑)
ジスモンダ、芸術、花・・・よく見る絵ですね。
ただ、ベルナールのポスターでも、シェイクスピアのとかトスカとかははじめて見た、と思う。
2:世紀末の祝祭
プラハ市民会館の装飾を任されたミュシャ。
民族的なテーマの絵も多く含まれており、スラヴ叙事詩につながるものと言える。
3:独立のための闘い
ミュシャ、切手や紙幣のデザインも手がけていたんですね。
小さい中にも、確かにミュシャ的デザインが!
祭典のポスターは、商業的なデザインと民族的な要素が融合したものとなっている。
母国に戻ったあとは、女性の描き方も変化・・・というのは奥さんの顔がモデルとなったからとか。ふっくらした顔立ちに。
4:習作と出版物
スラヴ叙事詩のための習作が見られる。
スラヴ叙事詩が揃って来日することはもうないかも?
是非どうぞ。
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