【吉田博展】
art-32 【吉田博展】 東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館
昨年から楽しみにしていた吉田博展がとうとう東京にやってきました!
ということで初日に見に行ったのですが、やはり損保ジャパンにしては混んでいましたね。
そして、点数が多いので、いつもは使わないスペースも使い、壁も増やしての展示だった。
第一章 不同舎の時代
吉田博は久留米の生まれで、地元の洋画家吉田嘉三郎の養子となり、その後、京都から東京へと出る。そして、小山正太郎の画塾である不同舎に入門している。
幼い頃から画才に恵まれていたようで、デッサン、水彩、こんなことを言ってはなんだか、実にうまい。
「土瓶や茶碗」などの静物画もいいのだが(ちょっと正しすぎるけれど)、やはり風景画。水彩の細かな表現が美しい。
「花のある風景」、素敵なお庭だこと!
第二章 外遊の時代
東京美術学校の西洋画科の教授に黒田清輝らがなり、門下生たちが次々と国費でフランスに留学する中、吉田博は友人の画家中川八郎とともに片道切符とわずかな生活費を持って渡米。デトロイト美術館館長に認められ、展覧会を行った結果、彼らの絵は売れに売れたという。
そのお金を元手にヨーロッパを回った吉田は、のちに義妹ふじ(のちに結婚)と共に再渡米、兄妹展を成功させる。
「街道の風景」をはじめとした、のどかな田舎の風景がアメリカ人に受けたのだろうか。どこかノスタルジックな絵である。
この頃から、朝の風景、夕方の風景、霧や雪など、季節や時間にこだわって描いていたようだ。
「霧の夕陽」、「夕暮」、「田舎の夕暮」など夕方の景色が気にいった。
夏目漱石の『三四郎』に登場する画が「ヴェニスの運河」。もう一枚「ヴェニスの運河」というタイトルの絵があるが、こちらは後年の木版につながるような油彩。前者の方がオーソドックスな絵である。
第三章 画壇の頂へ
帰国後、画壇の頂に登りつめたものの、黒田清輝との確執や、水彩画のブームが去り、時代遅れと見なされることとなったことで、吉田は山へと向かう。元々登山好きだった吉田は次々と山に入ってはスケッチし、作品を作りあげていく。
最近マイブームの富士山を描いた「富岳」も、雪と雲の中の富士山が描かれていて素敵なのだが、「穂高山」がとてもいい。この山には思い入れがあったのか、次男の名前は穂高というらしい。
自宅の居間に飾られていた「槍ヶ岳と東鎌尾根」の連作もいい。居間にこんな絵があったらなんと涼しげなことか!
同じく自宅に飾られたという「バラ」の連作7点がまた素晴らしいのだ。
水彩でもそうだったが、風景のみならず、花の絵も得意だったのだろう。
第四章 木版画という新世界
吉田博といえば木版画・・・のイメージだったのだが、意外にも版画をはじめたのは50歳近くなってから。
関東大震災後、被災した仲間のための資金集めに渡米したものの、あまり売れず、そのとき人気の版画を見て自分ならもっと素晴らしい作品が作れるはず、と取り組みはじめた。
吉田は徹底的にこだわり、自分でも彫ったり、彫りや摺りに厳しい注文をつけ、決して妥協しなかったという。時には80回以上も摺ることがあったとか。
いや~職人さんたち、やりにくかっただろうなあ(笑)
そのかいあって、素晴らしい作品の数々が生み出されたのだろうけれど。
版画でも山が多いのだが、意外と外国の山々もいいですね。モレーン湖やグランドキャニオンはダイナミック、ブライトホルンやマッターホルン(昼と夜がある)も美しい。
日本アルプス十二大題もキレイなのだが、ここまでくるとだいぶグラフィックな感じだ。ポスターにもなっている「剣山の朝」の山々が朝日に耀いている風景は、立山の朝を思い出した。徐々に夜が明ける様子が美しい。
瀬戸内海集の「帆船」は朝から夜まで6バージョン。どのバージョンもいい。
ダイアナ妃が気にいって購入したのは「光る海」ですね。
その他、気にいったのは動物シリーズや「渓流」。水しぶきがすごい。
第五章 新たな画題を求めて
昭和に入って、吉田はインドを旅し、そのまた数年後には韓国と中国を旅してたくさんの絵を残している。
インドの絵ではエキゾチックなものが並ぶ中、「カンチェンジェンガ」の2枚が気にいった。やはり山を描かせると素晴らしい。
「タジマハル」は神秘的。
日本の桜八題は、日本人に好まれそうな?
「東照宮」は80回、「陽明門」は96回の摺りということで、なんと細かい!
第六章 戦中と戦後
日中戦争画が始まり、吉田は従軍画家として中国へ行っている。
実際に乗ったであろう飛行機の絵が迫力。上から爆撃する様子を描いている。
溶鉱炉に惹かれて何度も描いたという軍需工場の絵は炎の熱が伝わってくるようだ。
最後の木版画となったのが「農家」という作品。穏やかな光景で、ここからまた作風が変わるかもしれなかったことを予感させる。
前後期で60点以上が入れ替えになるとのことで、後期も行かねば!
素晴らしいです。是非どうぞ。
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