【藤島武二展】
art-40 【藤島武二展】 練馬区立美術館
練馬区立美術館で開催された生誕150周年記念藤島武二展に行って参りました。
ホントは日曜日に行くつもりが台風で延期(行けなくはなかったけれど)。最終日に行くことになった。
最終日だからか、多少混雑あり。
序章として、「婦人と朝顔」からスタート。ちょっとけだるい雰囲気の絵。
Ⅰ-1 修業
藤島武二の師たちの絵画が数点。
この中で気にいったのは、曾山幸彦「上野東照宮」(平山東岳「松下虎図」も猫のような虎がお茶目)だが、一番その影響を感じるのは黒田清輝。
「池畔納涼」など、非常に黒田清輝的である。「湖畔」のイメージ。
「桜の美人」は顔が緑色で、ルノワールを連想するけれど、黒田清輝の「アトリエ」もそうなんですね。
Ⅰ-2 飛躍
藤島武二は装丁も多く手がけているが、アール・ヌーヴォーのような、ミュシャ的というか。
与謝野晶子の『みだれ髪』もそうだったんですねぇ。
その他の与謝野夫妻の作品も多く手がけており、雑誌の表紙などもたくさん展示されていたが、グラフィカルでおしゃれ。へえ、こういイメージなかったな。
この時代、絵葉書がブームになったそうで、藤島の作品もたくさんあったが、ヌーヴォー的だったり、ラファエル前派的だったり、なかなかよいのである。
ラファエル前派といえば、「夢想」もそう。ロセッティの影響を受けたとあったが、確かに雰囲気はそうかもしれない。
Ⅱ-1 留学
フランス、イタリアに留学したことが転機となった藤島。
残念ながら、イタリアへ移動する際に、パリで書きためた作品の多くが盗難にあってしまい現存しないとのことだが、「ヴェルサイユ風景」は現地で描いた絵の一つ。
この風景画はわりとオーソドックスだったが、イタリアで描いた「糸杉」などは、かなり抽象化された作品である。
やはり、人物画の方が印象に残りますね。
「チョチャラ」、「イタリア婦人像」、「老人像」いずれもいい。
Ⅱ-2 模索
帰国後、東京美術学校の教授となり、文展に出品するも不本意な結果が続く。
模索の時代であったようだが、確かにそれまでとは違った作風の作品もちらほらと登場している。
人物画の「うつつ」は細かい描写が減って大胆になり、静物画「アルチショ」はゴッホのよう。やや線の細いフォービズム的作品もあったり、「カンピドリオのあたり」は壁画のよう。色はドニのよう。
以前見たことがある(ブリヂストンでの「描かれたチャイナドレス展」)「匂い」もきていた。日本人が油彩でチャイナドレスを描いたはじめての作品とのことだが、これまたちょっとけだるい雰囲気。
Ⅱ-3 転換
ルネサンス期には横向きの女性像が一般的で、そこから発想を得て、藤島も多くの横向きの女性像を描いている。
今回は「鉸剪眉」、「東洋振り」など。
モデルは日本人?のようだけれど、ドレスがチャイナドレスということもあって、アジアンな雰囲気。
「東洋振り」は女性の顔が優しげで素敵だ。
Ⅲ-1 追求
宮中学問所からの依頼を受け、日の出を描こうと考えた藤島は、各地を旅する。日本のみならず台湾やモンゴルなども。
というわけで日の出の絵はたくさんあったのだが、次第に単純化されていって、日の出だけに集中しているかのよう。船などはあまりしっかり描かれていない。
モネの「印象、日の出」の雰囲気を目指したのだろうか。
この時期、風景画を多く描いているが、それほど色鮮やかでないフォービズムといった感じ。
Ⅲ-2 到達
日の出の絵の一つだが、内蒙古で描いたという「蒙古の日の出」、これはいいですね。
らくだはささっとしか描かれておらず、砂漠も曖昧な感じなのだけど、日の出の色が美しい。風景画ではこれが一番のお気に入り。
絶筆もやはり日の出を描いたもので「港の朝陽」。さらに曖昧さは増していて、すべてが溶け合うかのような絵であった。
そして、最後に飾られた絵は、「耕到天」。セザンヌのような、ポン=タヴァン派のような。平面的な風景画。大きな作品で迫力があった。
藤島武二の画風の変遷がよくわかる展覧会でした。
見たことのない作品も多く、充実しています。
残念ながら、本日で展覧会は終了です。
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