【ゴッホ展 巡りゆく日本の夢】
art-47 【ゴッホ展 巡りゆく日本の夢】 東京都美術館
勤務日だった土曜日。
食事をしたあとに向かったのは上野。
十中八九というか10割だめだと思っていた、怖い絵展の長蛇の列を横目に向かったのは都美術館。
ゴッホ展である。
ゴッホというとしょっちゅうやっているイメージがあるが、今回は日本との関わりにスポットを当てた展覧会である。
1 パリ 浮世絵との出逢い
オープニングはパリで描いた自画像。
その後、パリで出会った浮世絵と印象派の融合とでも言うべき作品が並ぶ。
今回の一つの目玉、「花魁(渓斉英泉による)」。
この絵は渓斉英泉の「雲龍打掛の花魁」が元ネタで、さらにこの浮世絵を反転させたイリュストレ誌の表紙絵のゴッホなりの絵である。その周囲に絵が描かれているのは何かなあと思っていたが、龍明鬙谷「芸者と富士」、二代歌川芳丸「新板虫尽」などのモチーフがとられているのだった。黄色い色が強烈である。
「カフェ・ル・タンブランのアゴスティーナ・セガトーリ」の背景にもよくよく見ると浮世絵が描かれていた。
浮世絵的な構図ということで、マネ、ロートレック、ベルナールの展示もあった。
2 アルル 日本の夢
ゴッホがアルルの地にきて、日本的だといったのはよくわからない部分もあるのだが、一つの理想が日本で、アルルもゴッホにとっては理想郷だったので結びついたんでしょうか。
この章の絵はひたすら明るいですね。
「雪景色」は本邦初公開。水平線が遠く、前の景色を強調している点は浮世絵的。
水平線が上すぎるという点では「サント=マリーの海」もそう。
「種まく人」は題材的にはミレーだけれど、手前に梅の木が大きく描かれていて、これはまさに広重の「江戸名所百景 亀戸梅屋敷」である。
広重といえば東海道五十三次だが、濱松とゴッホの「木の幹」の木のイメージがそっくりなのにはびっくりした。
糸杉やアーモンドもいいですね。
アルルにおいて、ゴッホは跳ね橋をいくつか描いているが、あの有名なのではなくて、なぜっか一部分しか残っていない絵がある。「水夫と恋人」であるが、スケッチを元にこの絵の全体を復元するというおもしろい試みがされていた。なぜこの一部分だけが残ったんでしょうね。
3 深まるジャポニズム
しばしば見る「寝室」がまたきていた。このゆがんだ部屋がおもしろい。
「タラスコンの乗合馬車」は初公開とのこと。
これは、ロティの小説『お菊さん』の影響を受けての絵らしい。
顕著な輪郭線(確かに馬車は縁取られている)、平坦な色面(べたっと塗ってる)、鮮やかな色彩(その前からも結構鮮やかでしたが)が特徴とのことだが、構図も浮世絵っぽいですね。
この頃の肖像画(今回の展示は「アルルの女(ジヌー夫人)」、「男の肖像」)は浮世絵の大首絵の影響だそう。確かに写楽の絵の影響とかはありそうですね。
日本的なモチーフとして描かれたのは夾竹桃だそうで。
初公開の「夾竹桃と本のある静物」はそのものずばりだけれど、違う絵の背景にも夾竹桃は描かれていた。
「オリーヴ園」は前々から好きな作品の一つだが、この頃から絵が大きくうねりはじめている。
4 自然の中へ 遠ざかる日本の夢
パリ時代の三枚の風景画も好き。
特に「アニエールの公園」、「蝶の舞う庭の片隅」。明るく美しい風景だけれど、言われてみて気づくのは地面がしめる割合が多いということ。これも浮世絵の構図の影響なんでしょうね。
サン=レミ時代の幹を描いた2枚、特に「草むらの中の幹」は強烈な印象。普通はなかなか置かない色である。うねってるし。
「ポプラ林の中の二人」(初公開)はちょっとシュールですね。手前は明るい色彩なのだけど、奥は暗く、闇が見えるようだ。
「蝶とけし」、「ヤママユガ」のクローズアップ画面も強烈。
これまた浮世絵の花鳥画の影響があるのかもしれませんね。
5 日本人のファン・ゴッホ巡礼
日本人はゴッホ好きと言われるけれど、そのルーツは大正~昭和初期の時代にあったらしい。
こぞってオーヴェル・シュル・オワーズに詣でたという。
ゴッホの最期を看取ったガシェ医師の息子がゴッホの絵画20点あまりを持っていて、それを見たりお墓を訪ねたりした。
芳名録やガシェ氏との書簡の展示があった。
こういう切り口のゴッホ展はなかったのかもしれませんね。
日本初公開作品もあって見逃せない展覧会かと。
是非どうぞ。
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