【松方コレクション展】
art-34 【松方コレクション展】 国立西洋美術館
芸大美術館に行ったあと昼食をとり、その後西洋美術館へ。
西洋美術館開館60周年記念の松方コレクション展である。
松方コレクションといえば、いつも常設展示で見ているし、はじめはあまり行く気はなかったのだけど、テレビで松方コレクションが数奇な運命をたどったことを知り、これは是非見なくてはと思った。
この日は平日だったが、チケットを買う列が15分待ち(実際はそれほど
かからず)。中は入場制限はなかったものの、かなりの混雑だった。
プロローグ
まずはモネの「睡蓮」。確かに西洋美術館といえば睡蓮のイメージはあるが、松方がモネから直接購入したものとのこと。まだまだ形ある睡蓮。
プラグィンの「松方幸次郎の肖像」。たった1時間で仕上げたそうだが、とてもよく特徴をとらえている。松方はプラグィンの助言で多くの絵画を手に入れている。
Ⅰ ロンドン
松方は第一次世界大戦時に船を売るためロンドンに拠点をおき、多くの絵画を取得している。はじめはプラグィンをはじめとしたイギリス絵画にはじまり、次第にコレクションは広がりを見せていった。
プラグィンの作品自体は今まであまり印象になかったなあ。西洋美術館にもあるようなのだけど。プラグインの多くの作品含め、900点以上の絵画が、預けていた倉庫の火災で失われており、残念だ。
パッと目に飛び込んできたのはロセッティ。「愛の杯」も「夜明けの目覚め」もやはりロセッティお好みの顔の女性。
ミレイの「あひるの子」。これは好きな作品。子どももあひるの子もかわいらしい。
セガンティーニが2枚。「羊の毛刈り」は牧歌的でなんか落ち着く作品だ。
Ⅱ 第一次世界大戦と松方コレクション
第一次世界大戦時、戦争を題材とした作品が多く作られたとのことで、松方コレクションにもそういった作品が多数含まれていたようだ。
戦意高揚というよりは、その目的で絵が描かれたものもあったのだろうけれど、あまり見ていてうれしくないような作品も・・・
墓地の前の女性たちを描いた「墓地のブルターニュの女たち」などは明るい色調なのにもかかわらず、悲しみが伝わってくる絵である。
Ⅲ 海と船
さすが、松方は造船業を営んでいただけあって、海景画のコレクションもある。
プラグィンの作品も2点あったが、ドービニーの作品がいいなあ。
ウジェーヌ=ルイ・ジローの「裕仁殿下のル・アーヴル港到着」が、昭和天皇が皇太子時代に訪欧した際に注文して作品だそうだ。
Ⅳ ベネディッドとロダン
美術館を設立すべく、ロダン美術館館長ベネディットを通じてロダン・コレクションを築く。
西洋美術館に行くと、まずは地獄の門とカレーの市民が迎えてくれますもんね。考える人、接吻など、素晴らしいコレクションだ。
ワタクシはロダンの弟子ブールデルの彫刻も結構好き。
Ⅴ パリ1921-1922
この時期、松方のコレクションは一気に充実していく。実際、この章の作品は名品ぞろい!
モネでは大きな作品「舟遊び」もいいのだけれど(この構図は大胆)、一番好きなのは「雪のアルジャントゥイユ」かな~「チャリング・クロス橋、ロンドン」もいいですね。
クールベのダイナミックな「波」は西洋美術館所蔵だが、横浜美術館にあるのは「海岸の竜巻(エトルタ)」。ちょっと作風が違う。
モロー、セザンヌ、ドニも好き。
オルセーからきているゴッホの「アルルの寝室」。この作品は第二次世界大戦後、結局返還されずフランスにとどめ置かれた作品の一つ。元々松方コレクションだったとは!ゴーガンの「扇のある静物」やセザンヌの「調理台の上のポットと瓶」もそう。さすがいい作品は返してはくれなかった・・・
Ⅵ ハンセンコレクションの獲得
松方はまたコペンハーゲンの実業家ハンセンのコレクションも手に入れているが、ほとんどがその後売却されてしまっている。
ドガの「マネとマネ夫人像」。マネが気に入らなくて切断してしまったという曰く付きの作品だが、どんなだったんでしょう?
よくブリヂストン(アーティゾン)で見るマネの「自画像」やシスレーの「サン=マメス六月の朝」、大原のモネ「積みわら」も松方コレクションだったとは!
ハンセンコレクション、すごい!
Ⅶ 北方への旅
松方は海軍からUボートの設計図の入手を依頼されており、派手な絵画購入はその隠れ蓑だったとか・・・これホントなの??
ピーテル・ブリューゲル(子)の「鳥罠のある冬景色」。細かいところまで見ると楽しい。
ムンクはいかにもムンク的な「吸血鬼」とか「女」とかもあるが(両方とも大原のもの)、「雪の中の労働者たち」はその中では異質かも。いつもこの絵を見ると描き残し(わざと?)が気になって仕方ない。
Ⅷ 第二次世界大戦と松方コレクション
金融恐慌のあおりで経営する川崎造船所が破綻、松方コレクションは散逸していく。その後第二次世界大戦後はフランス政府に接収され、返還されるという運命をたどった。
バーゼル美術館所蔵のマティス「長椅子に座る女」。マティスらしい明るい色に彩られた作品だが、この姿勢では女性が椅子から落ちそうな気が・・・
スーティンの「ページ・ボーイ」は現在はポンピドゥーセンターに。松方がスーティンというのはちょっと意外かも。
ルノワールの「アルジェリア風のパリの女たち(ハーレム)」は当初フランスから返還されないとされていた作品だが、美術館設立を条件として返還された作品とのこと。エキゾチックな1枚。
特別出品のマネ「嵐の海」はナチスの協力者に売られ、2013年になってミュンヘンで発見された作品とのこと。マネのこうした絵は(荒れた海)はじめてかもしれない。
エピローグ
2016年フランスで発見されて寄贈されたモネの「睡蓮、柳の反映」だが、疎開先での損傷が激しく上半分は失われてしまっていたものを修復して公開している。悲しい運命をたどった作品ですね。
松方コレクションがいかにして集められ、どのような運命をたどったかがよくわかる展覧会でした。
是非どうぞ。
« 上野:喜乃字屋 | トップページ | 【モダン・ウーマン―フィンランド美術を彩った女性芸術家たち展】 »
「文化・芸術」カテゴリの記事
- 【特別展はにわ】(2024.11.25)
- 神代植物公園3(2024.11.19)
- 【カナレットとヴェネツィアの輝き展】(2024.11.04)
- 【英一蝶展】(2024.10.14)
- 【田中一村展】(2024.09.23)
コメント