【没後50年 坂本繁二郎展】
art-29【没後50年 坂本繁二郎展】 練馬区立美術館
夏休み2日目は練馬区立美術館へ。
坂本繁二郎展である。没後50年の回顧展だが、坂本繁二郎だけの展覧会はワタクシははじめてかもしれない。
第1章 神童と呼ばれて
若き頃の作品。繁二郎は青木繁とともに森三美の元で絵を学んだ。
「立石谷」は日本画。日本画の技術も習得していた・・・しかも結構な腕前である。
第2章 青春-東京と巴里
盟友青木繁の作品も何点か展示があった。繁二郎らと訪れた千葉の海岸を描いた「海景(布良の海)」は、ごつごつとした岩に波があたる様子が迫力あり。
この頃の繁二郎の作品は、青木繁と同様、暗めな色彩なのだが、妻の薫をモデルにした「張り物」はめずらしく明るい色彩。この作品は文展にて褒状を受けた作品だそうだ。
フランスに留学したからなのか、ちょっと印象派的な作品もあった。
繁二郎というと、馬の絵のイメージだったのだが、その前には牛をよく描いていたのですね。
「うすれ日」は漱石が褒めていて、繁二郎の出世作となったとのことだ。
海岸に牛というのはちょっとおもしろい。
「帽子を持てる女」はよくブリヂストン美術館(今はアーティゾンですか)で見る作品で、なんか平面的に見える不思議な作品。繁二郎的なこの色遣いはこの頃から始まっていたのだなあ。
第3章 再び故郷へ-馬の時代
さていよいよ馬の時代である。
フランスから帰国した繁二郎は、東京ではなく故郷に近い八女に住む。
そして、あちこちで観察、馬の絵をたくさん描く。
淡い色調で、時には輪郭線もなく、背景に溶け込みそうな馬の絵。
ワタクシの繁二郎のイメージはまさにこれらの絵である。
並行して静物画も徐々に描いており、静物画の初期はちょっとセザンヌ風なところもあるけれど、次第に繁二郎独自の世界が構築されていく。
この章でツボだったのは「鳶形山」。山はそれほど目立っておらず、圧倒的に目立つのは雲。十字の墓のような不思議な雲である。ホントにこんな雲があったのだろうか。
第4章 成熟-静物画の時代
静物画の時代がやってきた。
一番多く描いているのは能面。なぜ能面???
という気もするが案外表情豊かで、まるで生きている人のようだ。
「壁」という作品では壁の上の方に能面が掛けられているのだけれど、どうみても浮かんで見える・・・
その他、果物や野菜はまあフツーだとしても、植木鉢(何も植えられていない、さかさまもある)とか石ころとか。モーターなんてものもある。
書籍もあったが、きっちり並べていてどこか神経質さを感じたのだった。
第5章 「はなやぎ」-月へ
最晩年の繁二郎が選んだモチーフは月雲。
なのだが、その前に「達磨」の絵がいいですねぇ。フンって感じの顔なのだけれど、なんかユーモラス。
そして、月だが、視力が衰え、アトリエに出かけることもできなくなり、自宅の窓から見える月を描いたということらしい。
馬との組み合わせの月が特にいいなあ。どれも静けさが漂う作品である。
大作、「雲仙の春・阿蘇の秋」がとても素敵だった。
若い頃から晩年までが網羅されていて、坂本繁二郎のことがよくわかる展覧会。是非どうぞ。
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