佐々木譲『エトロフ発緊急伝』
本日の本
book-14 『エトロフ発緊急伝』 佐々木譲 新潮文庫
STORY:太平洋戦争勃発の直前。日系人スパイ、サイトウは日本に潜入、択捉島へと向かい、駅逓の女主人ゆきと出会う。憲兵がサイトウを追って島に潜入するが・・・
☆☆☆☆五十音順読書の「え」はこちら。
この小説が書かれたのは1989年。読もう読もうと思っているうちになぜか機会を逸していまっていたのだった。
いや、これおもしろかった。もっと早く読めばよかった!
スケールの大きいスパイもので、スリル満点。
解説にあるように、ケン・フォレット『針の眼』と同じようなストーリー(大まかには)とも言えるけれど(ワタクシ、針の眼の映画は好き)、人物造形などはこちらの方がよくできてるなあと思った。
皆、悲しみを抱えた人物。
日系人であるが故にアメリカでは疎外されてきたサイトウ。
ロシア人の父を持つが故に、幼い頃から白い眼で見られてきたゆき。
南京で大切な人を失ったが故に虚無感からスパイ活動する宣教師スレンセン。
すべてを奪われ、憎しみの塊となった朝鮮人の金森。
差別から生まれ故郷にいつか帰りたいと思うクリル人の宣三。
登場人物の背負ったドラマが重いのだが、先を早く読みたいという気持ちになる。
史実を織り交ぜながらの重厚なドラマ。
第二次世界大戦三部作の二作目にあたる作品。他のも読みたくなりますね。
このお話に出てくる登場人物が他の作品にも出てくるらしいし、楽しみだ。
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