【ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎展】
art-19【ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎展】 アーティゾン美術館
アーティゾン美術館で開催中の青木繁と坂本繁二郎の二人展に行ってまいりました。
アーティゾンは久留米生まれ同い年のこの二人の作品を多く所蔵していて、この美術館ならではの展覧会。二人展は1956年以来66年ぶりの開催だそう。
第1章 出会い
坂本繁二郎の墨画「立石谷」からスタート。ちょっと写真みたいな画だが、まだまだ特徴はない。
青木、坂本はともに森三美の画塾で絵を学んでおり、それぞれが師と同じ風景を描いていて並んで展示されていたけれど、いずれも師の作品の方がよいかな~
青木は先に上京、画壇デビューを果たしており、その後坂本が追う形で上京する。
それぞれの修行時代のスケッチ、デッサンなどを見ると、やはり方向性の違いは見てとれる。
これははじめて見たが、青木は博物館に通い、舞楽、伎楽面をスケッチをしており、これがのちに古事記などを神話を題材とした作品へのスタートになったのかなあと思う。
青木「輪転」。裸で輪になって踊る女性たちを描いているが、神秘的。
一方の坂本「町裏」は非常にリアルな庶民の姿を描く。という具合に違いが次第に明白に。
青木、坂本らは千葉の布良へと写生旅行に出かけ、坂本から聞いたことをもとに青木の代表作の一つ「海の幸」が描かれる。いつみても不思議な絵だ。まだ未完成のような・・・一人だけこちらを向いている白い顔の人物は誰なのか・・・
青木は天才肌というか、芸術に対する思いがほとばしるような作品を描くのですね。「自画像」も力がみなぎるような姿が描かれている。
「海」と題する作品がいくつかあるが、点描っぽいタッチで荒々しい波が描かれており、クールベを連想させる。
「大穴牟知命」は蚶貝比売と蛤貝比売が死んでしまった大国主命を生き返らせようとしている場面を描いているのだが、妙にリアルな感じもあり、このお話自体を知らなかったら、いったいなんだこれは?と思いますね、きっと(笑)
旧約聖書の挿絵ははじめてみたが、なかなかよいですね。古事記などに通ずるものがある。
第2章 別れ
青木繁「わだつみのいろこの宮」。代表作の一つだが、東京勧業博覧会で3等賞の末席という不本意な結果に終わり、久留米に戻り二度と東京に戻ることなく、経済的に追い詰められる中、放浪の末28歳で亡くなる。
「わだつみの・・・」は古事記の海彦山彦を題材にとっているが、とても洋風な絵。海山彦がちょっと中性的で不思議な感じ。
九州に戻ってからの絵は、注文に応じて描いた風景画、肖像画などが多いが・・・もちろんいい作品もあるのだが、本意ではなかったのかも・・・
漁村風景などなかなかいいと思うけど。
青木の「自画像」と坂本の「自画像」が並んで展示されていたが、圧倒的にインパクトがあるのは青木の方。
第3章 旅立ち 坂本繁二郎
燃え尽きた青木繁に対し、坂本繁二郎は、次第に名声を得て、87歳まで穏やかに絵を描き続けた。
この頃から、坂本は牛を描くようになる。
そしてあまりイメージなかったけれど、パリに留学もしているんですね。
色が変化したのかな?水色、ピンクなど淡い色を使った作品が多くなっている。
アーティゾンでよく見る「帽子を持てる女」もそう。
この頃の風景画「放水路の雲」や「熟稲」など、雲の表現含めていいなあ。
帰国後、好んで描いたのは馬。坂本繁二郎といえば馬のイメージだが、どれもあたたかみのある絵で素敵。
やがて、馬が減ったのと、視力の衰えもあって、静物画へと移行。
りんご、梨、柿、植木鉢、鶏卵(ピンクだったり水色だったりちょっとシュールだが)など。
案外よかったのが、風景版画である。
第4章 交差する旅
坂本は能面をたくさん描いていて、練馬区立美術館で見た展覧会でもたくさん見たのだが、青木もまた描いていて、共通する題材があったのですね。
青木は正確なデッサン、坂本の作品は趣味という感じ(自ら買い集めた能面を描いたという)。
青木は壁画を描いたことはないが、壁画を念頭に描いたと言われるのが「天平時代」。めずらしく楽しそうな絵だ。
「漁夫晩帰」は「海の幸」を連想させる作品。
80歳を過ぎて坂本は月を描くようになる。幻想的な作品が多く、絶筆「幽光」も不思議な感じだ。
対する青木の絶筆は「朝日」。荒い波の上に朝日が昇ってくる様子を描いて力強い。
とても見応えのある展覧会でした。
是非どうぞ。
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