【山下清展】
art-17【山下清展】SOMMPO美術館
生誕100年、山下清展に行って参りました。
SOMPO美術館は、いつもそれほどは混まないのですが、今回はなかなかの入りでした。
やはり人気があるんですね。
第1章 山下清の誕生―昆虫そして絵との出合い
山下清は、軽い知的障害、言語障害があったことから学校でいじめられ、養護学校に行くことになり貼り絵をはじめることになる。
貼り絵の前は鉛筆画で、後年のペン画を思わせる細かさである。
貼り絵もはじめは昆虫で、わりと単純なものだったのが、だんだん進化する。ちょっと熊谷守一風でもある。
ペン画もはじめていて、「さかな」これいいですね。リットル魚といって、リットルに見える魚。デザイン的である。
第2章 学園生活と放浪への旅立ち
学園生活を貼り絵で。
はじめは決してうまくはなくて、ナイーブアート的というか、でもきっと、この生活にはなじんでいたんだろうな、楽しかったのだろうなということは伝わってくる。
戦争で物資が不足し、色紙の代わりに古切手を使ったりするのがまた味わいがある(「ともだち」など)。
「上野の東照宮」や「八幡様の鳥居」など風景画の方が才能が感じられる・・・と思ったのだが、静物画がなかなか凄いのだ。
百合、栗、菊など、なんと細かいこと!
やがて放浪の旅に出る清。徴兵検査が怖かったのも一つの理由らしい。ドラマでは、ランニングシャツと半ズボンといういでたちだったけれど、実際は浴衣か着物だったそう。
鉛筆画で放浪の様子を描いているけれど、行く先々で食べ物を恵んでもらったり、時には住み込みで働いたり、夜は駅で寝たりという生活。てっきりスケッチしながらの放浪かと思ったが、実際は驚異的な記憶力で、学園に戻った際に描いたそう。
この頃の作品では、さらに技術の向上が見て取れるが、代表作の一つ「長岡の花火」は、静物画でも使われていたこよりが使われていてインパクトのある作品になっている。観客も一人一人描きわけており、いやはや実に細かい。
ゴッホを模写した作品があったり、自画像もゴッホを意識していると思われる。
戦後も放浪を続けていた清だが、鹿児島で発見され実弟に連れ戻されることになる。この時に描いたのが「桜島」。水の表現が素晴らしい。
第3章 画家・山下清のはじまり―多彩な芸術への試み
放浪をやめて画家として活動することになった清。
油彩にもチャレンジしているが、乾くのに時間がかかりテンポがあわないとのことで点数は少ない。が、結構いい作品ばかりだ。描き方は貼り絵のよう。「ぼけ」はゴッホのアーモンドの花にインスパイアされたのだろうか。色味も似ている。
ペン画は本当に細かい。人物画よりやはり風景画だ。しかも風景だけの方が素晴らしいと思う。「小石川の後楽園」とか「大谷の平和観音」、「関門海峡」など。
貼り絵もさらに細かくなっていく。「グラバー邸」の細かさ!ちょっとグランマ・モーゼスのような雰囲気もある。
第4章 ヨーロッパにて―清がみた風景
ヨーロッパ旅行をした際の作品。
色調が明るくなった感じ。ヨーロッパの空の色がそうさせたのか・・・
「ロンドンのタワーブリッジ」など、一瞬刺繍絵のようにも思える細さ、細かさ。すごい。
ペン画も進化。ペンで描いたものに水彩で彩色した水彩画も登場。貼り絵とはまた違った味わいだけれど、やっぱり人物はちょい苦手なのかも・・・コペンハーゲンの人魚がちょっと??
第5章 円熟期の創作活動
陶磁器の絵付けにもチャレンジしているが、これがまたいいですね。貼り絵のような細かさはないのだけれど、味わいがある。
そして、富士山が好きだったとのことで、5枚ほど並んでいたけれど、ちょっと長細いというかデフォルメされた富士山。
ラストは、遺作となった東海道五十三次。このシリーズは知らなかった。貼り絵まで作る予定が版画までで終わってしまったのが残念だ。
大変充実した展覧会。
是非どうぞ。
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