書籍・雑誌

2024/09/05

有栖川有栖『月光ゲーム Yの悲劇’88』

本日の本

book-11 『月光ゲーム Yの悲劇’88』 有栖川有栖著  創元推理文庫

STORY:夏合宿で矢吹山のキャンプ場にやってきた英都大学推理研究会のメンバーは、噴火で他の2グループの学生たちとともに、キャンプ場に閉じ込められてしまった。その中で一人、二人と殺人鬼の犠牲者が・・・

☆☆☆有栖川有栖のデビュー作にして、学生アリスシリーズ第一弾。

噴火で道が閉ざされるというクローズドサークルもの。
このジャンルは好きなので、わくわくしながら読み始める。
はじめは、登場人物の見分けるのが大変で、これ誰だっけ?となる(最後までちゃんと覚えられない・・・苦笑)。

少ない食料で救援を待つ学生たちだったが、一人が刺殺体となって発見され、Yというダイイングメッセージが見つかり、さらに死体が発見され、行方不明者の指も見つかる・・・
閉ざされた空間の中で、皆疑心暗鬼になる中、さらなる噴火が起きて、ついに下山を決心する学生たち。

平成のエラリー・クイーン、有栖川有栖の作なので、ちゃんと読者への挑戦もあり・・・
いやしかし、犯人はわからなかったなあ。動機はなんかそんなことかもとは思ったけれど。

そして、ダイイングメッセージだけれど、うーん、ちょい無理があるような?本の中にちゃんと写真があって、あとから見返してみると、まあそうかなとは思ったけれど・・・
カメラのフィルムが盗まれたのはそういうことか!というのはなるほどと思いました。
その他、伏線もしっかり回収され、最後まで読んでみれば、フェアな本格物でありました。

 

2024/08/26

ブルース・アレグザンダー『グッドホープ邸の殺人』

本日の本

book-10 『グッドホープ邸の殺人』 ブルース・アレグザンダー著 ハヤカワポケットミステリ

STORY:18世紀後半のロンドン。盲目の治安判事サー・ジョンは助手のジェレミー少年とともに、発砲事件のあったグッドホープ卿の邸宅に赴く。卿が自殺したと思われたが、ジェレミーの一言で他殺の可能性が・・・

☆☆☆☆「実在した盲目の判事を主人公にしたシリーズ第1弾。

小説家で法律家のヘンリー・フィールディング(「トム・ジョーンズ」を書いた)の弟で、盲目の治安判事として知られたジョン・フィールディングの活躍を、フィールディングの助手となった少年が後年記録したという体裁をとっている。

まず、18世紀後半のロンドンの描写がいきいきとしていて、目に浮かぶよう。ぐっと物語にひきこまれる。

人物造形、描写も秀逸で、読ませますね。

ただ、密室ミステリと思われたのだけど、うーん、それは期待はずれ・・・
でもそこじゃないんですね。
犯人もまあそうじゃないかなと思った通りで、本格ミステリではあるけれど、想定の範囲内。

いやそういうことがあっても、小説として読ませるので全然オッケー。
次作も是非読みたい。

ただ、作者の死後も奥さん他が書いた1作含め、11作あるのに、もう1作しか翻訳されてなくて、すごく残念です。

 

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2024/07/13

E・S・ガードナー『偽証するオウム』 

本日の本

book-9 『偽証するオウム』 E・S・ガードナー著 ハヤカワポケットミステリ

STORY:億万長者セイビンが山荘で殺され、すさまじい叫び声をあげる彼のオウムが傍らで発見される。しかし、そのオムはセイビンがかわいがっていたオウムではなかった・・・

☆☆☆ペリー・メイスンシリーズ。

ペリー・メイスンものは子供の頃、何冊か読んだのだけど、ほとんど覚えておらず、この本もよんだかどうかは不明・・・
五十音順読書「ぎ」で読んでみることにした。

本より、新ペリー・メイスンシリーズの方が印象に残ってるんですね。メイスンと秘書デラ役はそれぞれ、レイモンド・バーとバーバラ・ヘイルでオリジナルと同じキャスト。探偵ポール・ドレイクは出てこなくてジュニアの役で、ヘイルの子、ウィリアム・カットが出演してたのでした・・・

ペリー・メイスンものは、なんとなく軽い読み物、というイメージがあって・・・実際すらすら読めるのだけど、今回読んでみて、意外と(失礼!)本格物ではあるんだなあと。

伏線がしっかり張られて、なるほどね、そういうトリックかとか。
そして、解決したあとに、さらなる謎が解き明かされ、読後感よし。

またまとめて読んでみたいなあ。
退職したら、順番に読んでみようかしらん。
入手するのが大変そうだけど・・・
昔のテレビシリーズも是非みてみたい。

 

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2024/06/22

ダシール・ハメット『ガラスの鍵』 

本日の本

book-8 『ガラスの鍵』 ダシール・ハメット著 ハヤカワ・ミステリ文庫

STORY:賭博師ネドは、上院議員の息子の殺人事件に巻き込まれる。市政を操る黒幕と対立するボスとの争いにも巻き込まれていくが・・・
☆☆ハードボイルドの巨匠ハメットの長編。

ハメットは寡作で、長編は数編しか残していない。
一番有名なのは『マルタの鷹』かな?
子供の本で読んだし、映画も見たけれど、ハードボイルドは映画はいいんだけど、本は苦手であまり読んでこなかった。
特に古典は・・・

昨年だったか?ロス・マクドナルドの『さむけ』を読んで、これは傑作!ハードボイルドもいけると意気込んで読んだのだが・・・

結果はダメ・・・
これは苦手なハードボイルドだった。
登場人物にまったく感情移入できず、まったく乗れないまま終了。
いや、ハードボイルドは、客観的描写で、心情は入れない・・・というものなのかもしれないけれど、多分、これが苦手なのかなあ。
これやっぱり、映画で見るべきだなと。きっと主人公はかっこよく描かれているはず!

 

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2024/05/18

ジャネット・イヴァノヴィッチ『私が愛したリボルバー』 

本日の本

book-7 『私が愛したリボルバー』 ジャネット・イヴァノヴィッチ著 扶桑社ミステリー

STORY:失業したステファニーはやむなくバウンティ・ハンターに転身。はじめて追いかけることになった相手は幼なじみの警官だった・・・

☆☆☆ステファニー・プラムシリーズ第1作。

30歳バツイチのステファニーは失業して、生活に困り、バウンティ・ハンター(賞金稼ぎ・・・保釈保証会社から保釈金を借りて出所したものの、出廷しなかった逃亡者をつかまえて警察につれていく)の世界に飛び込む。銃を持つのもはじめての素人で、はじめは失敗ばかり・・・
ベテランハンターに助けられながら、次第に逃亡者を追い詰めていくというお話で、ミステリーなわけだけど、どちらかというとコメディ要素が大きいかな。もちろん、犯人が誰かという楽しみもあるし、主人公がどうなるかというハラハラもあるけれど。

とにかく出てくる登場人物がみなキャラが濃い!!
家族もなかなかで、特におばあちゃんメイザのぶっ飛びぶりといったら!今後も活躍?してくれそうだ。

作者はロマンス作家出身とのことで、主人公の恋愛も今後、描かれていきそうで、これもたのしみな要素。
レンジャーがカッコいいなあ。

次作も読まなければ!

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2024/05/10

アリスン・モントクレア『ロンドン謎解き結婚相談所』 

本日の本

book-6 『ロンドン謎解き結婚相談所』 アリスン・モントクレア著 創元推理文庫 
  
STORY:戦後のロンドン。スパイスキルを持つアイリスと上流階級出身のグウェンは結婚相談所を営んでいた。実直な会計士にある女性を紹介した矢先、女性が殺害され会計士は逮捕されてしまう。二人は犯人捜しに乗り出すが・・・

☆☆☆シリーズ幕開け。

読み始めて、なんとなくマギー・ホープシリーズと、ワニ街シリーズを思い出した。
実際はマギーシリーズほどシリアスでなく、ワニ街シリーズほどぶっ飛んではいない・・・

出自も性格もまったく異なる女性2人が、巻き込まれた殺人事件を解決するというストーリー。
コージーミステリかなと思って読み始めたのだけど、ハードボイルド的要素もあり、謎解きはちゃんと本格的で、意外な犯人登場でミステリとして十分堪能できるのだが・・・

2人の友情と、成長の物語としてもよくできていて、次作以降も楽しみな感じだ。
お互い秘密を抱えてなんとなくよそよそしさもあった2人だが、次第にお互いを理解、バディとなっていく過程がよい。
用心棒?サリーのキャラもおもしろく、続編も楽しみだ。

 

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2024/04/06

中山七里『連続殺人鬼カエル男』

本日の本

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book-5 『連続殺人鬼カエル男』 中山七里著 宝島社文庫 
  
STORY:マンションの13階から吊り下げられた女性の死体。傍らには稚拙な犯行声明文があった。捜査が進展しない中、第二、第三の殺人事件が発生、街中を恐怖に陥れる・・・

☆☆☆どんでん返しにつぐどんでん返し・・・

読み始めから残虐に殺された死体が発見され、警察をあざ笑うかのように、殺人事件はエスカレートしていく。
このあたりの描写はかなりグロくて、飛ばし読みしたいという気持ちになるくらい。
なかなかのサイコサスペンス!と思ったが、そうではなかった。

ラスト近く、たたみかけるような展開で、どんでん返しでおおとびっくりしているとさらなるどんでん返し、そして、ラストはさらなるオチが!これはすごい!
そして、前段でも壮大なミスリードがあったことに気づく。
そしてそして、私の大好きなクリスティのあの小説だね、と思ったのだった。

続編があるようなのだけど、ここからどう展開するのだろう。また、グロい描写が多いのであれば、読むのを躊躇するなあ。

ドラマ化もされているようでもあるけれど、まさかあまり強烈な描写はないよね・・・気になるけれど、怖くて見られないかも??

 

2024/03/13

モーリス・ルブラン『ルパン、最後の恋』 

本日の本

ルパン、最後の恋

book-4 『ルパン、最後の恋』 モーリス・ルブラン著 ハヤカワ・ミステリ文庫 
  
STORY:フランス貴族レルヌ大公が自殺。遺書には娘が親しくしている四銃士の中にルパンがいるので頼りにせよと書かれていた。誰がルパンなのか・・・
☆☆☆久々に読んだルパンもの。

ルパンは子供の頃よく読んだ。
小学生の頃はポプラ社だったかの子供向けの本を、中学生になってからは文庫本で多分全部読んだはず。
一番好きだったのは「813」。

この物語はルブランの遺作で、まだ十分な推敲がされていない状態で孫によって発見され、2012年に発売されたもの。

確かに、ちょっと荒削りな感じはするけれど、わくわくする冒険ものであることには違いない。

ルパンが年取っているからか、ちょっと雰囲気が変わっているけれども、やはりカッコいい。
そして、数々の浮名を流したルパンが最後の恋を・・・
こんな風に落ち着くとは思わなかったな。

昔読んだ作品の数々をまた読んでみようかな。

2024/02/19

ロバート・ゴダード『リオノーラの肖像』 

本日の本

リオノーラの肖像

book-3 『リオノーラの肖像』 ロバート・ゴダード著 文春文庫 
  
STORY:リオノーラは幼くして両親をなくし、祖父パワーストック郷に引き取られるも不幸な生活を送っていた。やがて幸福な結婚をするも、過去の暗い出来事がついて回り・・・生涯をかけて過去の謎をといていく。

☆☆☆☆ロバート・ゴダードの2作目。
一時期ゴタードの作品は読んだものだが、久々だった。

物語は、70歳のリオノーラが娘に、生まれ育ったミアンゲイト館を巡る謎を語りはじめるところから始まる。

重層構造の物語で、時代はいろいろと飛んでいくのだが、いろいろな謎が提示される。
絡みに絡んだ物語は、ほぐれたかと思いきやまた新しい謎が出てきて・・・

後半一気に謎がとけていくんだけれど、犯人はなるほど、もしやと思った人物であったけれど、それなりの驚きがあり・・・
これで物語も収束したと思いきや、なんとびっくり最後にどんでん返しが・・・これは驚き。でも、じわじわと感動がきて、読後感は爽快。

リオノーラがずっと辛い思いをしてきて、読み手としてもずっと辛いなと思い読み進めてきたたのだけれど、ああよかったなと。

ゴダードの作品は長くて、読むまでが大変なのだけど(笑)、読み始めるとあっという間。また別のも読んでみようかな。

2024/02/02

原田マハ『楽園のカンヴァス』 

本日の本

楽園のカンヴァス

book-2 『楽園のカンヴァス』 原田マハ著 新潮文庫 
  
STORY:MoMAの学芸員ティムはスイスの大邸宅で、ルソーの名作「夢」と同じ構図とタッチの絵を見る。真贋を正しく判定した者にこの絵を譲ると告げられるティムのライバルは日本人研究者の織絵だった。

☆☆☆初、原田マハ。

美術好きとしては、興味深い題材の小説が多いのだけど、今まで読む機会がなく・・・

五十音順読書ミステリー編「ら」で読むこととなった。

お話は、現代の織絵から、過去の織絵とティム、そして、アンリ・ルソーへと遡り、物語は交錯する三重構造。

ティムと織絵が絵の真贋を判定する材料として与えられる古い文書の中にルソーの物語が綴られているのだが、この文書を書いたのは誰なのかという謎もあり、どんどん引き込まれる。

ルソー、そしてピカソ、アポリネール、そして「夢」のモデルとなった女性が登場し、どこまでが真実かわからない・・・いやでも本当にあったかもしれないと思わせるストーリー展開。

このルソーをめぐるお話が、絵の真贋に関する謎ときへとつながっていく展開は見事で、読み応えあり。
さらに、現代の物語の謎へともつながっていき、素敵なラストへ。

ルソーの絵が見たくなりますね。

作者の他の作品も是非読んでみよう。

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