書籍・雑誌

2025/11/09

マウリツィオ・デ・ジョバンニ『P分署捜査班 誘拐』

本日の本

book-12 『P分署捜査班 誘拐』 マウリツィオ・デ・ジョバンニ著 創元推理文庫

STORY:美術館から資産家の孫の少年が姿を消す一方、不可解な空き巣事件も発生。P分署の面々が捜査にあたるが・・・
☆☆☆イタリアの現代版87分署ともいうべき警察小説の第二弾。

第一弾がおもしろかったので第二弾も読んでみた。

今回は誘拐事件、空き巣事件、自殺事件が同時進行する。
時間の展開もおもしろいのだけど(自殺がそういう展開!という驚き)、なんといっても分署の面々が個性的なのがよい。
前作よりプライベートな展開もあったりしてそれも今後どうなるか・・・

前作では裕福な若手警官アラゴーナだけ、どうも感情移入できなかったのだけど、失礼な奴だけど頭の回転は速いし、なかなか見どころがあるかもと思ったり。

誘拐事件は、なんとも悲しい展開、そしてあの結末はいったい???なんとなくもやもやした感じで終わってしまったけれど・・・

次作も楽しみなシリーズだ。

2025/10/12

『パパ、ママ、あたし』 カーリン・イェルハルドセン

本日の本

book-11 『パパ、ママ、あたし』 カーリン・イェルハルドセン著  創元推理文庫

STORY:ペトラ刑事が公園で冷えきった赤ちゃんを発見、近くで母親と思われる女性の死体も発見する。一方、フィンランドフェリーの船内で16歳の少女の絞殺死体が発見される。2つの事件を任されたショーべり警視。やがて2つの事件が思いがけない展開をみせる。

☆☆☆スウェーデンのショーべり警視シリーズ第2弾。

子供に関係する2つの事件。
たまたま2つの事件はショーべり警視が担当することになるが、まったく関係がないと思われたのが、次第に絡み合い、そしてもう一つの子供をめぐるお話も加わって、集束していく。この展開はとてもおもしろい。
しかも、ちょっとした目くらましがあって、うまくだまされました・・・

しかし、ほんと、北欧ミステリって暗くて重いなあ。
いや北欧ミステリは大好きなんだけれど、心して読まないと!

前作で好感度高かったショーべり警視だけど、あれれ?好感度下がる・・・
女性刑事ペトラのその後も衝撃的な展開が・・・
警察の面々も問題山積み、しょうもない署長や副署長の話もあり、一番かっこいいのは、子供を必死に助けようとするバルブロおばあちゃんかも。
とはいえ、警察の面々のその後も気になるので、次作も是非読みたい。

 

2025/09/13

ウィリアム・ランディ『ボストン、沈黙の街』 

本日の本

book-10 『ボストン、沈黙の街』 ウィリアム・ランディ著 ハヤカワ・ミステリ文庫

STORY:ボストンの検事補の腐乱死体を発見した田舎町の若き警察署長ベンは捜査のためボストンに乗り込む。退職した敏腕刑事の助けを借り、捜査に加わるが、自身に容疑がかかってしまう・・・

☆☆☆著者第1作。

主人公ベンが死体を発見し、ボストンへと行くまではスムーズに展開。その後、しばらく中だるみが・・・なにせ600ペーシ以上あるので・・・
が、この中だるみにもいろいろと伏線が張られていたと後で気づきましたね。

警察署長といっても、まだ25歳、警官として経験も実績もなく、ただ父親から職を受け継いだだけの主人公。
都会ボストンに出て、百戦錬磨の刑事たち、検事、そしてギャングと関わるうちに、さらに事件が起こり、なんと主人公が犯人と目されてしまう。
苦境を脱し、やがて真相に迫る主人公。
若き警官の成長物語なんだなと思っていたら、最終盤にその展開!
まあ確かにヒントはあったし、なるほどとは思ったけれど、そういう結末なのかと・・・
すっきりしたようなしないような。

長いけれど読ませるミステリーであることに間違いはないです。

2025/08/17

アンドレアス・フェーア『弁護士アイゼンベルク』 

本日の本

book-9 『弁護士アイゼンベルク』 アンドレアス・フェーア著 創元推理文庫

STORY:凄腕の女性刑事弁護士アイゼンベルクの元にホームレスの少女が依頼が持ち込まれる。ホームレスが若い女性を殺害した事件だったが、容疑者は彼女の昔の恋人だった・・・

☆☆☆☆ドイツミステリー。

ドイツミステリーといえば、ネレ・ノイハウスのオリヴァー&ピアシリーズが大好きなのだが、この作家さんははじめて。

主人公アイゼンベルクが捕らえられて危機一髪な場面ではじまる。
時は遡り、彼女が事件の依頼を受け、被疑者が元恋人、そして、猟奇的な殺人だということがわかる。
並行してさらに遡ってコソボから亡命しようと吹雪の中車を走らせる女性の話が挟み込まれ・・・

この2つの物語がどう交錯していくのだろうということが気にかかりつつも、容疑者が自白をくつがえし、さらにまた覆すという展開。

そして、ついに2つの物語がつながった時、さらに過去の事件がリンクして、ああなるほど・・・と思ったら、どんでん返し!ぞっとする結末。

主人公は頭が切れて行動力もあって・・・なのだけど、ちょっとパワハラチックなところもあり、はじめはあまり好きになれず・・・最後になってようやくいいかと思えるように。別居中の浮気夫、反抗期の娘、依頼者の男爵、事務員達など、個性的なキャラをいろいろいておもしろい。

ラスト1ページ、え?何?という新しい謎も提示されて、これはもう次の作品を読むしかないな。

2025/07/19

アリッサ・コール『ブルックリンの死』 

本日の本

book-8 『ブルックリンの死』 アリッサ・コール著 ハヤカワ・ミステリ文庫

STORY:趣のある家が並ぶブルックリンの一角。シドニーは昔からいる人々が次々と新しい住人に入れ替わっていることに気づくが・・・

☆☆☆サスペンススリラーかと思ったら・・・

人が次々消えていくというスリラーなのかと思ったら、主人公(離婚して実家に戻ってきた女性と、金持ちの女性とともに引っ越してきた無職の男性セオ)の抱えたある秘密が次第に明らかになり・・・
この秘密が暴露されたところで、どうなるのかという話になっていくんだと思ったら、なんと!さらに先にびっくり・・・というかとんでもない展開に。

これはえええええと思わず叫んでしまった(心の中で)。
マイケル・クライトンの私の好きな某映画を思い出しましたね。
もうこれはホラー・・・

結末はちょっと強引かなと思ったけれど、いいところに落ち着いたのかなと。

これ、映画にもなりそう。

2025/06/21

アシモフ他編『ビッグ・アップル・ミステリー』 

book-7 『ビッグ・アップル・ミステリー』 アシモフ他編 新潮文庫

STORY:ママは再婚すべきだと考えたわたしは、上司のイルマー警部を引き合わせるが、ある事件の話になり・・・ジェイムズ・ヤッフェ「春爛漫のママ」他11編。

☆☆☆アイザック・アシモフが編んだ、ビッグ・アップル=ニューヨークを舞台としたミステリアンソロジー。

ニューヨークという土地柄をいかしたミステリとは言いがたいものもあるけれど、これこそニューヨークというお話もたくさん楽しめる。

でも、やっぱり好きな作家というと偏りがあって、お気に入りは、ヤッフェのブロンクスのママシリーズ、ホックの怪盗ニック、アシモフの黒後家蜘蛛の会シリーズ、そしてエラリー・クイーン。
アシモフの「よきサマリアびと」は読後感がよくて、ほっこり。ヤッフェのブロンクスのママシリーズは全部は読んでいないので、未読のもの読んでみようかなあ。

一番スリルがあったのは、ウールリッチの地下鉄を舞台をした作品。短いながら、ハラハラドキドキ。映画「スピード」なんかを思い出したり・・・

短編集は気軽に読めるのがいいです。

2025/05/24

クリスチアナ・ブランド『薔薇の輪』 

本日の本

book-5 『薔薇の輪』 クリスチアナ・ブランド著 創元ミステリ文庫

STORY:女優エステラの人気の秘密は、体が不自由な娘との交流を綴った新聞の連載にあった。服役中の夫が病気のため恩赦で出所、娘と会いたいと言ったことから・・・

☆☆☆ブランドがメアリ・アン・アッシュ名義で書いた本格ミステリー。

ヤクザものの夫がボディガードともに、田舎の農場に娘に会に行ったとこから、事件発生。夫とボディガードが死亡、娘が行方不明になる。

少ない登場人物(女優と秘書、娘を育てている夫婦)がなにやら結託?怪しい行動で、捜査を攪乱。チャッキー警部を惑わす。まあなんとなくこの人が犯人かしらというのはあるのだけど、何せ容疑者たちが演技上手で容易にはしっぽを出さない。

チャッキー警部がなかなかいいキャラで(他の作品にも登場するらしい)、しぶとく犯人を追い詰める。こちらも芝居上手。
この攻防がおもしろい。チャッキー警部の勝ち!

いやあ、しかし、ブランドは人の悪意を描き方が怖いですね。

 

2025/04/26

綾辻行人『どんどん橋、落ちた』

本日の本

book-5 『どんどん橋、落ちた』 綾辻行人著 講談社文庫

STORY:ミステリ作家綾辻行人の元を自作のミステリをもって訪ねてきたU君。読者への挑戦もついた犯人当て小説だったが・・・他4編。

☆☆☆短編集。
綾辻さんの作品というと、館シリーズを何冊か読んでいるのだけど・・・

いやー、これは挑戦状もついていたり、本格パズラーかしらと思ったら、なんとまあ・・・オチがびっくり。特にはじめの3作が。
「どんどん橋、落ちた」で、えええ、そういうオチ?いやまあフェアではあるかと思い・・・
「ぼうぼう森、燃えた」ではそっちきたか、やられたと思い・・・
「フェラーリは見ていた」では、またやられちゃったよと苦笑。
一番好きなのは「伊園家の崩壊」かな。まるであの有名アニメ(漫画)を連想しますね。井坂先生なる人物も出てくるし。このお話が一番ミステリをしてはなるほどと思うものの、かなりブラックだ。
「意外な犯人」は犯人には納得するけれど(これはわかりやすいし)、最後がちょっと不条理な感じですね。

変化球なミステリ短編でした。

2025/03/24

サイモン・ベケット『出口のない農場』 

本日の本

book-4 『出口のない農場』 サイモン・ベケット著 ハヤカワポケットミステリ

STORY:フランスの片田舎に逃げてきたショーンは森の中で罠にはさまって重傷を負う。農場の娘マティルドに助けられるが、その農場は何かがおかしかった・・・

☆☆☆心理サスペンス。

のっけから、何かに追われた青年がイギリスからフランスへとたどり着き、獣取り罠にはさまれて大けがを負ってしまうという展開。
まず、この青年ショーンがなぜ逃げてきたのか、なぜ違法な薬物を持っているのかという謎が提示される。同時に、助けられ担ぎ込まれた農場の謎もまた提示され、過去と現在の話が交互に進んでいく。
何かを隠しているように見える農家の長女マティルド、挑発的で除著不安定なその妹、そして粗暴な父親。
じわじわ追い詰められる主人公とともに、呼んでいるこちらも追い詰められるよう。じわじわくる怖さというか、不安定さ。

ショーンの秘密より、この農場の秘密の方が恐ろしく、救いがない。読後感が悪いなあと思ったのだけど、ラスト、犬がいい味を出していて、少し救いが・・・

いや~読んでいて辛かったけれど、おもしろい小説ではありました。

 

2025/03/12

アントニイ・バークリー『第二の銃声』 

本日の本

book-3 『第二の銃声』 アントニイ・バークリー著  創元推理文庫

STORY:ミステリー作家ヒルヤードの屋敷で推理劇が開催されるが、被害者役の男性が本物の死体となって発見される。犯人役のピンカートンが疑われ、素人探偵のシェリンガムに助けを求めるが・・・

☆☆☆初バークリー。
なんと、有名な『毒入りチョコレート事件』もまだ読んでいないんである・・・

事件が起きるまでは少々退屈だったのだが、事件が起き、探偵が呼ばれたあと一気におもしろくなった。

探偵シェリンガムがちょいクセのある人物で、皆が翻弄されてしまったりするのだけど、いやはやこれも一種の目くらまし。
なんとまあそうきましたか!
某有名ミステリーの同じ趣向だけれど、それをさらにひねった感じでいやーやられましたね。

まず、これで解決かと思いきや、シェリンガムが答えを提示した・・・かと思いきやさらにどんでん返しが!伏線の張り方うまいですねぇ。

毒入りチョコレート事件も是非読んでみなければ!

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