書籍・雑誌

2023/04/18

カリン・スローター『開かれた瞳孔』 

本日の本

book-4 『開かれた瞳孔』 カリン・スローター著 ハヤカワ・ミステリ文庫
  
STORY:レストランのトイレで女性教授が惨殺された。第一発見者となった検死官のサラ。やがて第2の事件が起き・・・
☆☆☆初カリン・スローター。

読むのがつらいかも?と思い、なかなか手に取らなかった本。
で、確かに読むのがつらい・・・というか、むごいお話で、描写もどぎついのである。

犯人は唐突に出てきて、振り返ってみると、まあこの人が犯人ねと思うのだけど、その動機がまた恐ろしい・・・
狂ってる・・・

メインの登場人物が皆いろいろありすぎで(過去がつらい)、救いがなくて息苦しくなるけれど、最後はちょっと光が見えただろうか。

サラと元夫の警察署長ジェフリーとの関係、強烈な個性の刑事リナの行方が気になるので、きっと次作も気が滅入るだろうなと思いつつ読んでみたい。

2023/03/11

ジャナ・デリオン『ハートに火をつけて』 

本日の本

book-3 『ハートに火をつけて』 ジャナ・デリオン著 創元推理文庫

STORY:潜伏中のCIA秘密工作員フォーチュンの友人アリーの家が放火される。大切な友人を守るため、アイダ・ベルとガーティとともに犯人捜しをはじめるが・・・

☆☆☆☆ワニ町シリーズ第4弾。
第5弾ももう出版されているのだけど、まずは4冊目。

今回は前作終わりで約束したディナーに保安官助手カーターと出かけるところからはじまる。
が、すんなりいくわけはなく?友人アリーの家が放火されて、デートは中止。

もちろん?フォーチュンだけでなく、ぶっとびおばあちゃんコンピ、アイダ・ベルとガーティもおとなしくしているわけはなく・・・
カーターの警告を無視して、捜査・・・というかいつものとおり大暴走。

アリーとの友情やカーターとの恋も絡んできて、ちょっと新しい感じもあるけれど、今回も大爆笑の場面の連続。笑うのこらえるの大変。

カーターとはどうなるか?も気になるところだけど、やっぱり、おばあちゃんたちの活躍(暴走)?が今後も楽しみ。

フォーチュンがこの町にきて3週間しかたっていないとは!
アメリカではもう20冊以上出ているらしいけれど、今後どうなるやら・・・

2023/02/11

横山秀夫『ノースライト』 

本日の本

book-2 『ノースライト』 横山秀夫著 新潮文庫
  
STORY:青瀬が設計した信濃追分の家。施主一家は一脚の古い椅子を残して消えてしまった。青瀬は行方を追うが・・・

☆☆☆初横山秀夫である。

なんとなく食わず嫌いで読んでいなかったが、中山道歩きで高崎の達磨寺に寄り、ブルーノ・タウトの家を久々に見て、ブルーノ・タウトが登場するこの本を読んでみようと思ったのだ。

確かにミステリーではある。
主人公に是非建てて欲しいと言われて建てた家の施主が忽然と姿を消してしまい、行方を追う話と、主人公が所属する小さな建築事務所が参加することになったコンペの行方・・・
主人公の生い立ちや、離婚した妻や子との関係などを絡ませながら物語が進行していく。
そういうことだったのかという結末。悲しい物語がいくつも重なった末の結末。
謎は解きあかされるわけだけど、どちらかというと、主人公や主人公を囲む人々の再生の物語として読んだ。

ブルーノ・タウトの椅子も重要な役割を果たしていて、もうちょっとタウトのことが知りたいなあと思ったのだった。

さすがうまいなあ。ちょっと技巧的かなとは思ったけれど。

 

 

2023/01/29

フレッド・ヴァルガス『ネプチューンの影』 

本日の本

book-1 『ネプチューンの影』 フレッド・ヴァルガス著 創元推理文庫  

STORY:ネプチューンのトリダン(三叉槍)で刺された傷のある死体が発見される。警察署長アダムスベルグは30年前、自身の弟が犯人と疑われた事件と同じ事件だった・・・

☆☆☆警察署長アダムスベルグシリーズ。
読むのははじめて。

正直、200ページちょっとのところまで、なかなか読み進められず・・・
主人公、アダムスベルグもつかみどころのない人で、なんだかなじめない・・・

ところが出張先のカナダでの事件が起き、いったんパリに戻ったアダムスベルグが再びカナダに渡ったところから一気にお話が動きはじめ、おもしろくなってくる。

とはいえ、主人公のキャラがよくわからず(実は過去の事件が影響していることがわかってくるものの)・・・
正直なかなか好きになれずにいたのだけど、部下たちがいい人たちばかりで。主人公を嫌っていたはずの女性刑事ルタンクールの活躍、そして、忠実な部下ダングラールの上司への信頼がいいなあと。
そして、なんといっても、どうやら以前の事件で知り合ったらしい老婦人とその友人が素敵。友人の老婦人はなんとハッカー!!
スカッとする活躍をみせてくれる。

今後もこのキャラ登場に期待!

2022/12/23

西澤保彦『ぬいぐるみ警部の帰還』 

本日の本

book-15 『ぬいぐるみ警部の帰還』 西澤保彦著 創元推理文庫  


STORY:殺人現場の残されたぬいぐるみ。そこからインスピレーションを得て事件解決するのは超イケメンのぬいぐるみ好きの警部だった・・・

☆☆☆短編集。

だいたいにおいて、探偵というのは個性的な人が多いのだが、この音無警部も変な人だ。超イケメンのエリート警部なのだが、無類のぬいぐるみ好きという・・・
脇を固める刑事たちもやはり変で、則竹刑事はクールビューティーなのだが、音無警部に恋するあまり妄想がとまらないし、江角刑事は推理マニアで独自の推理がとまらないという・・・

これだけの役者がそろえば、オフビートか、ドタバタか、ユーモアミステリになりそうなところなのだけど・・・
確かに刑事たちのやりとりはユーモアはあるのだけど、案外シリアスなんですね。
犯罪がシリアスというのもあるけれど、犯人たちを相当冷めた目で描写しているというのもあるのだ。

なので、決して読後感すっきりというわけではなく、そこは予想と違ったけれど、結構本格ミステリーなのでそれなり読み応えがありました。

 

2022/11/24

ジェフ・アボット『逃げる悪女』  

本日の本

book-14 『逃げる悪女』  ジェフ・アボット著  ハヤカワ・ミステリ文庫

STORY:モーズリー判事は幼い時に自分を捨てた母親を探していた。ついに見つけた母親はギャングになっており、組織のお金を盗んで逃走中。その金を狙って、ギャング、麻薬組織、恋人が追うが・・・

☆☆☆モーズリー判事シリーズ第3弾。
といっても、1作目も2作目も読んではいない。
ということで、途中からだとわからないかしら?と思ったけれど、それは大丈夫。

いろんな人物(全員変・・・)が入り乱れ、敵味方がわからないままストーリーは進行。なんだかどういう方向に進んでいくかわからないのだけど・・・
だましだまされ、ホントの悪はというと、なるほどねと。
ちょっといろんな要素を詰め込みすぎて渋滞してしまっているのが残念かな。

アメリカ的親子愛のサイドストーリーもあって、一瞬感動の場面もあるものの、最後はシニカル。

この作家さんの作品は図書館シリーズ以来で、好みとしては図書館の方かなあ。

2022/11/22

ドロシー・L・セイヤーズ『ナイン・テイラーズ』 

本日の本

book-13 『ナイン・テイラーズ』 ドロシー・L・セイヤーズ著 創元推理文庫  

STORY:ある村の屋敷の主人が亡くなり、亡き妻と同じ墓に葬られることになったが、掘り返してみると、見知らぬ死体が埋まっていた。ピーター郷が呼ばれるが・・・

☆☆☆ピーター郷シリーズ第9弾。

以前、セイヤーズ作品は1作だけ読んだことがあるのだが、読みづらくてそれきりになっていた。
今回、五十音順読書ミステリー編で「な」はないかなと思ったら、この有名作品があったので読んでみた。

前よりは苦手意識がなかったかなと思うけれど、翻訳がちょっと・・・
大好きな訳者さんなんだけど、多分なまりを日本語的に再現してるのだろうと思ったけれど、うーん・・・

そして、やっぱり長いんですね。
さらに、ペダントリー的でちょっと冗長。もうちょっとそぎ落とした方が読みやすいのではないかなあ。

ミステリーとしては最後のおちがなるほどど思ったけれど、またしばらくセイヤーズは読まない気がする・・・

イギリス女流ミステリー本格作家のビッグ4では、やはり好きなのは圧倒的にクリスティー、続いてマージョリー・アリンガム、セイヤーズかな。ナイオ・マーシュはまだ一冊も読んでないのです。

2022/10/04

ジョセフィン・テイ『時の娘』 

本日の本

book-12 『時の娘』 ジョセフィン・テイ著 ハヤカワ・ミステリ文庫 

 
STORY:スコットランドヤードのグラント警部は任務遂行中に骨折し入院するが暇を持て余し、リチャード三世が本当に2人の甥たちをロンドン塔に幽閉したのち殺害したのか、を推理することになる。

☆☆☆ミステリーの古典的名作。

いつかは読もう読もうと思っていたのだが機会を逸してしまい・・・
今回、五十音順読書ミステリー編で「と」の順番がきたので、ようやく手に取った次第。

骨折で入院したスコットランドヤード警部が、似顔絵からはとても悪人には見えないと思った、リチャード三世が、前王であった兄の子たち(甥)を殺したというのは本当なのか、を暇にまかせて推理する、というお話で、歴史ミステリーでもあり、また安楽椅子探偵ものでもある。

この甥殺しに関しては、ミレーの有名な絵「塔の中の王子たち」やドラローシュの「ロンドン塔のエドワードとリチャード」のイメージがあり、リチャード三世は極悪非道の王様だとすり込まれていたのだが、それを突き崩し、別に犯人がいたと結論づけるのである。

おお、なるほどねと、リチャード三世は悪い王様ではなかったんだなと納得させられるけれど、本当のところはどうなのかは永遠の謎なわけで・・・
この小説だけでなく、塔の中の王子たちを殺した犯人は○○という説はあるようなのだけど、一般的にはやはりリチャード三世の仕業であるというのが定説。いやでも、そうじゃないのかも??

楽しく読んだのだけど、基本的知識として、薔薇戦争とか、このあたりの基本的な知識がある方がもっと楽しめるだろう。

2022/09/06

藤原伊織『テロリストのパラソル』

本日の本

 

book-11 『テロリストのパラソル』 藤原伊織著 文春文庫  

STORY:過去を隠しひっそりと暮らすアル中バーテンダーの島村。新宿中央公園の爆弾テロに居合わせ、事件に巻き込まれた島村は犯人捜しをはじめるが・・・

☆☆☆直木賞、江戸川乱歩賞W受賞作。

ずっと読もうと思っていてなぜか読みそびれ、今回、五十音順読書ミステリー編をやっていて、「て」の番になったので読んでみた。

なんと言っても語り口のうまさ。
早く先を読みたくなるのだ。

そして、登場人物が印象深い。
主人公は過去を捨て隠れて暮らすアル中バーテンダー。ワタクシ、アル中の探偵ってあんまり得意ではないのだけど、不器用なキャラ悪くはない。それより、印象的なので、主人公を助けることになる、インテリヤクザ。義理堅く、筋の通らないことが大嫌いな男で、カッコいい。

犯人はなんとねーという人物でびっくりしたけれど、ちょっと動機がよくわからない部分もあり・・・
あと、ちょっと偶然が重なりすぎてない?という疑問もあったり・・・

いやそれでも十分おもしろかった。

主人公の作るホットドッグがおいしそうで食べたくなったのでした。

 

2022/08/23

アレン・エスケンス『償いの雪が降る』

本日の本

book-10 『償いの雪が降る』 アレン・エスケンス著 創元推理文庫  

STORY:大学の授業で年長者の伝記を書くことになったジョーは、三十数年前の少女暴行殺人事件の犯人として服役していたが末期がんのため仮釈放され、最後の時を介護施設で過ごすカールを紹介される。話を聞くうち、えん罪だと確信したジョーは真相を探ろうとするが・・・

☆☆☆☆バリー賞などを受賞した著者のデビュー作。

苦学して大学に入ったジョーは、身近に年長者がいなかったため、紹介されて殺人犯カールのインタビューをすることになるのだが、あたりさわりなく伝記を書こうとしたところ、思いがけず、カールの人生にどっぷりつかることになる。

カールのつらい過去と対峙するうちに、ジョーは封印していた自分のつらい過去を思い出す。

カールの事件を掘り起こす一方、家族のトラブルに悩まされ・・・
アル中で男にだらしない母親、自閉症の弟・・・
絶望的な環境から脱するべく、大学に入ったジョーだが、断ち切ることができず、もがく毎日。

しかし、カールとの関わりがジョーを変えていく。
ジョーとカールの癒やしの物語で、最後には大感動が待っているのだ。

ミステリー的には、わりと早い段階で犯人の推測がつくのだけれど、それも気にならない。

ジョーがあまりに無謀すぎるのでハラハラするけれど、なんか応援したくなってしまうのですね。

大学を卒業したジョーの続編も翻訳されているので、是非読まねば。

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