書籍・雑誌

2025/04/26

綾辻行人『どんどん橋、落ちた』

本日の本

book-5 『どんどん橋、落ちた』 綾辻行人著 講談社文庫

STORY:ミステリ作家綾辻行人の元を自作のミステリをもって訪ねてきたU君。読者への挑戦もついた犯人当て小説だったが・・・他4編。

☆☆☆短編集。
綾辻さんの作品というと、館シリーズを何冊か読んでいるのだけど・・・

いやー、これは挑戦状もついていたり、本格パズラーかしらと思ったら、なんとまあ・・・オチがびっくり。特にはじめの3作が。
「どんどん橋、落ちた」で、えええ、そういうオチ?いやまあフェアではあるかと思い・・・
「ぼうぼう森、燃えた」ではそっちきたか、やられたと思い・・・
「フェラーリは見ていた」では、またやられちゃったよと苦笑。
一番好きなのは「伊園家の崩壊」かな。まるであの有名アニメ(漫画)を連想しますね。井坂先生なる人物も出てくるし。このお話が一番ミステリをしてはなるほどと思うものの、かなりブラックだ。
「意外な犯人」は犯人には納得するけれど(これはわかりやすいし)、最後がちょっと不条理な感じですね。

変化球なミステリ短編でした。

2025/03/24

サイモン・ベケット『出口のない農場』 

本日の本

book-4 『出口のない農場』 サイモン・ベケット著 ハヤカワポケットミステリ

STORY:フランスの片田舎に逃げてきたショーンは森の中で罠にはさまって重傷を負う。農場の娘マティルドに助けられるが、その農場は何かがおかしかった・・・

☆☆☆心理サスペンス。

のっけから、何かに追われた青年がイギリスからフランスへとたどり着き、獣取り罠にはさまれて大けがを負ってしまうという展開。
まず、この青年ショーンがなぜ逃げてきたのか、なぜ違法な薬物を持っているのかという謎が提示される。同時に、助けられ担ぎ込まれた農場の謎もまた提示され、過去と現在の話が交互に進んでいく。
何かを隠しているように見える農家の長女マティルド、挑発的で除著不安定なその妹、そして粗暴な父親。
じわじわ追い詰められる主人公とともに、呼んでいるこちらも追い詰められるよう。じわじわくる怖さというか、不安定さ。

ショーンの秘密より、この農場の秘密の方が恐ろしく、救いがない。読後感が悪いなあと思ったのだけど、ラスト、犬がいい味を出していて、少し救いが・・・

いや~読んでいて辛かったけれど、おもしろい小説ではありました。

 

2025/03/12

アントニイ・バークリー『第二の銃声』 

本日の本

book-3 『第二の銃声』 アントニイ・バークリー著  創元推理文庫

STORY:ミステリー作家ヒルヤードの屋敷で推理劇が開催されるが、被害者役の男性が本物の死体となって発見される。犯人役のピンカートンが疑われ、素人探偵のシェリンガムに助けを求めるが・・・

☆☆☆初バークリー。
なんと、有名な『毒入りチョコレート事件』もまだ読んでいないんである・・・

事件が起きるまでは少々退屈だったのだが、事件が起き、探偵が呼ばれたあと一気におもしろくなった。

探偵シェリンガムがちょいクセのある人物で、皆が翻弄されてしまったりするのだけど、いやはやこれも一種の目くらまし。
なんとまあそうきましたか!
某有名ミステリーの同じ趣向だけれど、それをさらにひねった感じでいやーやられましたね。

まず、これで解決かと思いきや、シェリンガムが答えを提示した・・・かと思いきやさらにどんでん返しが!伏線の張り方うまいですねぇ。

毒入りチョコレート事件も是非読んでみなければ!

2025/02/07

恩田陸『象と耳鳴り』 

本日の本

book-2 『象と耳鳴り』 恩田陸著 祥伝社文庫

STORY:象を見ると耳鳴りがすると語る老婦人。喫茶店でその話を聞いた関根多佳雄は、その謎を解き明かす・・・表題作他、11編。

☆☆☆短編集。

元判事の関根多佳雄が各話に登場する。
この人物、著者のデビュー作『六番目の小夜子』にも登場するらしい。

お話は結構バラエティに富んでいる。
ぞくっとするものあり、なるほどと思うものあり、ひねりがきいたものあり・・・
ストンと落ちるものもあるけれど、あいまいなまま終わり、余韻を残すストーリーも多い。

特に好きなのが次の2作品。
「机上の論理」
多佳雄の息子春(検事)と娘夏(弁護士)が一枚の写真から推理合戦を繰り広げるお話で、会話だけで進んでいく。真相は意外なものだけれど、ここまでお話を読んでくるとなるほどと思う。
「往復書簡」
こちらは手紙のやりとりだけで進むお話。
手紙の内容だけで事件を解決してしまう多佳雄がすごいが、最後にちょっとしたオチもあったりする。

これは、『六番目の小夜子』も読んでみないと!

 

 

2025/01/11

エラリー・クイーン『Zの悲劇』 

本日の本

book-1 『Zの悲劇』 エラリー・クイーン著 創元推理文庫

STORY:政界のボスとして君臨する上院議員が刺殺された。脅迫の手紙が見つかり、1人の元囚人が浮かび上がるが・・・

☆☆☆ドルリー・レーン悲劇4部作の3作目。

『Xの悲劇』と『Yの悲劇』は昔読んだのだが、これは読んでいなかった。
『Yの悲劇』は読んだとき衝撃、すごい傑作!と思ったがこれはどうか。

読み始めると、ドルリー・レーンもサム警視(今は私立探偵)をちょっと年取って(Yから10年が経っているらしい)、サム警視の娘が登場している。
という違いもあってか、なんかちょっと雰囲気が違うんですね。

正直、ちょっと退屈・・・というか読みづらく・・・しかし、犯人として捕らえられ死刑宣告した男を救うため、レーンたちが奔走するあたりからおもしろくなってきた。
もう執行されるというすんでのところで、ストップさせるところはとてもスリリング。

そして、レーンが当事者を集めて、消去法で容疑者を消していき、残ったあなたが犯人だと指摘するところはなかなかに盛り上がる。
この指摘の中で、ああなるほどと思うことになるのだけど、大どんでん返しがあるわけでなく、地味な推理の積み重ねで事件は解決する。でも、ドルリー・レーンは元俳優だけあって、犯人指摘に至るまでの話術はなかなかにドラマチック。

こうなったら、最後の事件も読むかなあ。

 

2024/12/07

乙一『ZOO 1』 

book-16 『ZOO 1』 乙一著  集英社文庫

STORY:双子の姉妹カザリとヨウコ。なぜか姉のヨウコだけが母親から虐待されていたが・・・「カザリとヨウコ」他4編。

☆☆☆短編集。文庫化にあたって2冊となった1冊目。

初乙一である。
なんの予備知識もなかったのだが、ホラー寄りの作品が多いのかな?
と思ったら、1の方がホラーが集められてるようだ。

「カザリとヨウコ」
これはいやーな気分になるお話。なんとなくこういう結末かなと予想したけれど、うわあ・・・という感じ。
「SEVEN ROOMS」
映画になったら、目を背けたくなりそうな怖いホラー。
実際映画になっているらしいけれど、
「SO-farそ・ふぁー」
ファンタジーかしら?と思ったら違った・・・
これはこれで怖い。
「陽だまりの詩」
これが一番気に入ったお話。これはホラーじゃないですね。SFかな。ラストがもの悲しい。ほろりとくる。
「ZOO」
これまた結末が想像できたけれど、じわじわくる。

バラエティに富んだ短編集でした。

2024/11/30

クリスチアナ・ブランド『自宅にて急逝』 

book-14 『自宅にて急逝』 クリスチアナ・ブランド著 ハヤカワポケットミステリ

STORY:老当主が遺言状を書き換えると言い残しロッジに引っ込むが、アドレナリンの過剰投与で殺される。殺人者の足跡がなく、遺言状も消えていた。

☆☆☆コックリル警部シリーズ。
クリスチア・ブランド作品を読むのは3作目。

親族が集まる中、遺言状を書き換えると宣言した当主が殺されてしまう・・・というのはよくある展開である。

登場人物がみなどこか変でだれもが動機を持っている、というのもあよくある展開。
けれど、登場人物たちが探偵役のコックリル警部を差し置いて、謎解き合戦をするという・・・ま、もちろん解決するのはコックリル警部なわけだけど。

登場人物があれこれ言うのが目くらましになっているけれど、最初の方にヒントはあったんですね。足跡なき殺人のトリックも・・・うーん、このトリック、いけるのかな??いやいけるか笑

ラスト、ちょっと悲しいというか、まあよかったというべきなのか。最後の一文もよいと思う。

2024/10/27

アレックス・マイクリーディーズ『ザ・メイデンズ ギリシャ悲劇の殺人』 

本日の本

book-13 『ザ・メイデンズ ギリシャ悲劇の殺人』 アレックス・マイクリーディーズ著 ハヤカワ・ミステリ文庫

STORY:夫を亡くし悲しみに沈むセラピストのマリアナはケンブリッジ大学の学生である姪から友人が殺されたと知らされ、大学に向かう。マリアナは被害者たちの指導教授フォスカを疑うが・・・

☆☆著者の第2作。

のっけから不穏な空気で始まる。
主人公は夫を亡くしたばかりで自身も情緒不安定な中、セラピストの仕事をやっているという設定なのだが、これが読み手の不安を募らせる。

第一の殺人に続いて第二の殺人、さらにという展開で、主人公は犯人はこの人とターゲットを決めて調べてまわるが、端から見て主人公の方がおかしいのではと、さらに追い詰められていく。
ギリシャ悲劇と絡めて、この辺はなるほどねと思ったけれど、うーん、結末が後味悪すぎるなあ。
それにやっぱり、主人公に共感しにくいというのもマイナス要素。やたらもてるというのも・・・

嫌ミスとして読めばいいのかもしれないけれど、ちょっと苦手なタイプのミステリーでした。

2024/10/01

ロバート・B・パーカー『ゴッドウルフの行方』 

本日の本

book-12 『ゴッドウルフの行方』 ロバート・B・パーカー著 ハヤカワ・ミステリ文庫

STORY:大学図書館稀覯本ゴッドウルフ写本が盗まれた。総長の依頼を受けたスペンサーは学内過激派組織の女子学生テリイと接触するが、深夜、彼女からの電話で駆けつけると、死体の傍らで立ち尽くす彼女の姿が・・・

☆☆☆スペンサーシリーズ第一弾。

昔々、父親がずっと読んでいたのだが、当時ハードボイルドは基本苦手で避けていた・・・
今回読むこととなったのは、五十音順読書「ご」で見つけた本がこれだったから笑

ハードボイルド、最近読んだので言えば、ロス・マクドナルドはOK、ハメットはダメ・・・

ではスペンサーはというと、これはOK!
タフ、ストイック、そしてお料理も意外と上手そう?
なんといってもよいのは、タフ(すぎるけど)なだけじゃなくて、優しいところがよいのだ。
2作目以降、恋人のスーザンや、相棒のホークが登場してくるとまた違った感じになっていくようなんだけど・・・

ミステリー的には、なんとなく予想のつく展開ではあるけれど、警察にもマフィアにも屈せず、救おうと思った相手のためにとことん闘うスペンサーの物語を楽しめばよいのだろう。

2作目以降も読んでみたい。

2024/09/05

有栖川有栖『月光ゲーム Yの悲劇’88』

本日の本

book-11 『月光ゲーム Yの悲劇’88』 有栖川有栖著  創元推理文庫

STORY:夏合宿で矢吹山のキャンプ場にやってきた英都大学推理研究会のメンバーは、噴火で他の2グループの学生たちとともに、キャンプ場に閉じ込められてしまった。その中で一人、二人と殺人鬼の犠牲者が・・・

☆☆☆有栖川有栖のデビュー作にして、学生アリスシリーズ第一弾。

噴火で道が閉ざされるというクローズドサークルもの。
このジャンルは好きなので、わくわくしながら読み始める。
はじめは、登場人物の見分けるのが大変で、これ誰だっけ?となる(最後までちゃんと覚えられない・・・苦笑)。

少ない食料で救援を待つ学生たちだったが、一人が刺殺体となって発見され、Yというダイイングメッセージが見つかり、さらに死体が発見され、行方不明者の指も見つかる・・・
閉ざされた空間の中で、皆疑心暗鬼になる中、さらなる噴火が起きて、ついに下山を決心する学生たち。

平成のエラリー・クイーン、有栖川有栖の作なので、ちゃんと読者への挑戦もあり・・・
いやしかし、犯人はわからなかったなあ。動機はなんかそんなことかもとは思ったけれど。

そして、ダイイングメッセージだけれど、うーん、ちょい無理があるような?本の中にちゃんと写真があって、あとから見返してみると、まあそうかなとは思ったけれど・・・
カメラのフィルムが盗まれたのはそういうことか!というのはなるほどと思いました。
その他、伏線もしっかり回収され、最後まで読んでみれば、フェアな本格物でありました。

 

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